ゆずが最新チャートで体現した、“ライブ時代における音源の価値の高め方”とは?

 ちなみにこのアルバムがリリースされたのは、件のライブが終わってから3週間後。このスピード感にはちょっとびっくりしたものの、実は前作のライブ盤『歌時記 ~ふたりのビッグ(エッグ)ショー篇~』(2001年7月)もライブ後2週間でCDリリースにこぎつけている。もともとはストリートライブという一瞬のやり取りでお客さんを掴まなければいけない環境に身を置いてきた2人からすれば、このタイムラグすらもしかしたらまどろっこしいのかもしれない。

 折しも「音源からライブへ」「パッケージから配信へ」という産業としての大きなトレンドの中で、「何のためにCDをリリースするのか」というそもそもの部分についてアーティストおよびそのチームのクリエイティビティが求められる時代になりつつある(一例として、今週8位のパスピエも「フェスでパスピエを知った人に、フェス以外でも自分たちの音楽を聴いてもらいたい」という思いから『フェスミックスCD』のイベント会場限定販売という取り組みを行っている)。今回ゆずが採用した「大箱でのライブ×それをすかさず音源化」という手法は彼らからすれば「14年ぶりに久々にやってみました」というだけのことかもしれないが、「ライブの時代における音源の価値の高め方」として今後改めて浸透する可能性があるように思える。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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