ゆずが最新チャートで体現した、“ライブ時代における音源の価値の高め方”とは?

参考:2015年09月07日~2015年09月13日のCDアルバム週間ランキング(2015年9月21日付)(ORICON STYLE)

 「今の日本の音楽シーンの雰囲気」が妙にわかりやすく炙り出されている今週のオリコンアルバムチャート。ドリカム、ゆず、ウルフルズといった90年代から活躍するアーティストが変わらない存在感を見せ、偉大な先達に続く新世代のロックバンドとしてパスピエが初のトップ10入り。3位と4位には「K-POP」「女性グループアイドル」というすっかり市民権を得たジャンルに属する超新星とアイドリング!!!が登場。「千本桜」のカバーで一般的な知名度を得た和楽器バンドやアニメ音楽で名を馳せる澤野弘之のプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]といったクールジャパン界隈の音楽もそれぞれ6位と7位にランクイン。唯一の洋楽アーティストとしてトップ10に名を連ねたのが、アメリカのチャートで1位に鎮座しているThe Weekndではなく「スラッシュメタルの雄」ことスレイヤーというのも何とも日本っぽい。オリコンランキングの存在意義については様々な意見があるが、今のところはまだまだ「時代の空気」をまとった場所だなあと再確認した次第。

 さて、今週のチャートでワンツーフィニッシュを決めたのがゆずのライブアルバム『二人参客 2015.8.15~緑の日~』『二人参客 2015.8.16~黄色の日~』。タイトル通り、8月半ばに行われた横浜スタジアムでの弾き語りライブの模様を1日ごとにパッケージ化したもの(2枚とも完全生産限定盤)。歌、ギター、ブルースハープ、ピアニカなどを駆使して2人だけで音楽を奏でていく様からは路上で歌っていた時代と地続きのものを感じるが、曲間に挟まれる拍手や歓声は間違いなくスタジアムサイズのもの。この「等身大の演奏(あとMCも)」と「オーディエンスからの熱い反応」のギャップにゆずというグループの面白さ、つまり当初のスタンスを維持したまま国民的な人気者になってしまったという愛すべきアンバランスさが凝縮されている。フレッシュさが売りだったキャリア初期のナンバー(「月曜日の週末」「ところで」など)もいまだ瑞々しく、またそういった楽曲と「Hey和」「雨のち晴レルヤ」といった10年代以降に発表された壮大なバラードが違和感なく並んでいるわけで、ライブ盤の体裁をとりながらちょっとしたベストアルバムのような作品になっているとも言える。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「チャート一刀両断!」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる