『問題のあるレストラン』ときゃりー「もんだいガール」が示した、ドラマと音楽の幸福な関係

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きゃりーぱみゅぱみゅ『もんだいガール(初回限定盤)』(ワーナーミュージック・ジャパン)

 テレビドラマと音楽というと、多くの人が連想するのは主題歌だろう。

 90年代には『東京ラブストーリー』の主題歌である小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」や、『101回目のプロポーズ』の主題歌であるCHAGE&ASKAの「SAY YES」などのミリオンセラーが生まれドラマのタイアップを取ることがヒット曲の条件という時代もあった。しかし、今はドラマの主題歌=ヒット曲という公式はあまり機能していない。

 だが、一方で『モテキ』や『あまちゃん』などの音楽自体が作品のテーマと有機的に結びついている作品も多数生まれており、劇中に登場した曲やコンピレーションアルバムがヒットするというケースも生まれている。

 そんなドラマと音楽の結びつきで、今期もっとも面白いのが、『問題のあるレストラン』の主題歌・きゃりーぱみゅぱみゅの「もんだいガール」だ。

 『問題のあるレストラン』はフジテレビ系木曜夜10時から放送されている女性差別を題材としたドラマ。主人公の田中たま子(真木よう子)が経営する「ビストロ フー」には理不尽な女性差別に苦しむ女性たちが集まり、男社会の象徴ともいえるライバルのレストラン「シンフォニック」に戦いを挑む物語となっている。

 脚本は坂元裕二。91年に『東京ラブストーリー』の脚本を執筆し、近年では『それでも、生きてゆく』や『最高の離婚』といった話題作を手掛ける人気脚本家だ。

 女性差別という重いテーマを扱っている本作だが、ドラマ自体は実にポップだ。キャッチ―な会話劇や、登場人物が心情を吐露する極端な長台詞、役者のイメージを逆手にとった魅力的なキャスティングなど、見どころは多い。重いテーマと、ドラマならではの面白さが拮抗しているのが最大の魅力だろう。

 そんなドラマらしいカタルシスに一役買っているのが主題歌の「もんだいガール」だ。

 エンディングテーマが流れる中、物語が進んでいくというのはドラマではよくある手法だが、「もんだいガール」は、ドラマの重要な転換点で使用されている。

 例えば、第1話では、たま子に呼ばれて集まった仲間たちが、たま子が逮捕されたことを知って絶望的な気分になったところで、「ごめんなさい遅れちゃって」と、たま子が現れ、「でででででででで」と、あのイントロが流れる。

 また、第3話では、元ひきこもりの天才シェフ・雨木千佳(松岡茉優)が、プレオープンで厨房がうまく回らない中にかけつけるのだが、うまくできないたま子たちを罵倒した後、たま子に説得されて、厨房に入る場面で、曲がかかる。

 つまり、主人公たちがトラブルに巻き込まれる様子がこれでもかと描かれ、気持ちがどん底に落ちきった後、物語が転換する時にあのイントロがかかるのだ。

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