Las Vegas×でんぱ組.incが生み出した“新しい熱狂” 対バン成功の背景を読み解く

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 かつて、リアルサウンドのインタビューで彼らがBOOM BOOM SATELLITESと対談した際、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之は彼らの音楽性を「ラウドロックと、アニソンやゲームミュージックやボーカロイドやオートチューンが分け隔てなく同じテーブルにのっていて、そこに音楽的な偏向がないっていう。そこは僕らの世代と決定的に違うし、ここには新しい価値観があると思う。(中略)今の音楽シーンの中でも、なかなかショッキングな存在だと思いますよ」と評している(参考:【「ライブの熱狂」を生む音楽的条件とは? BOOM BOOM SATELLITES×Fear, and Loathing in Las Vegas対談】)。実際、あらゆる音楽ジャンルを横断するサウンドと、フラットさを徹底させた個性が新たなシーンを切り拓いているのは、ライブの盛り上がりを見れば明らかだ。

 一方で、でんぱ組.incもあらゆるカルチャーを横断してきたアイドルとして知られている。メンバーそれぞれがコアな“ヲタク”であり、ゲームやアニメといったアキバカルチャーの持つ熱気を、アイドルという形で提示し続け、アイドルシーンのみならずロックシーンなどでも支持を獲得してきた。そして、2008年に秋葉原ディアステージという小さな箱から始まった彼女たちは、今年の5月には日本武道館公演を即ソールドアウトさせるまでに成長。まさに叩き上げのライブアイドルで、そのパフォーマンス力は折り紙付きだ。

 ラウドロックとアイドル。違う畑にありながらも、あらゆるカルチャーを吸収し、独自のパフォーマンスを確立してきた両グループが対バンするのは必然だったのかもしれない。この夜は、2つのエクストリームなグループにより、ジャンルの壁が突破された瞬間だったのではないだろうか。

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 SxunがMCで「でんぱ組のときみんなスゲー楽しそうで早くライブしたかったです! あの光る棒はなくなっちゃったんですか?」と語ると、次曲の「Swing It!!」ではサイリウムとタオルが観客たちの頭上で回される。アイドルカルチャーとラウドロックカルチャーが見事に融合したのは、雑食性の両グループによる対バンだからこそだろう。「こういうの面白いやろ?っていうのをどんどんやっていきたいです。自分の楽しみたいように楽しんで、ほかの人の楽しみ方も尊重して、俺たちについてきてください!」と語るSxunの言葉には、とても説得力がある。そして、「初心に帰る」という意味で『PHASE 2』以前の楽曲「Chase the Light!」「Love at First Sight」を演奏。テンションをまったく落とさぬままにラスト曲、「Stay as Who You Are」まで一気に走り抜け、熱狂渦巻くステージが幕を閉じた。

 新鮮な2つのカルチャーがぶつかり合い、爆発的な盛り上がりを見せた今回の対バン。今回のライブの成功は、今後のシーンにも影響を与えそうだ。なお、12月19日には、大阪にてツアーファイナルを迎える予定となっている。

(文=松田広宣)

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