円堂都司昭の新曲「GOLDEN GIRL」レビュー
いきものがかり新曲はなぜ「君」が主人公なのか “歌の共有”めざす創作スタンスを分析
いきものがかりの新曲「GOLDEN GIRL」は、ドラマ「女はそれを許さない」の主題歌として書き下ろされた。同ドラマでは、深田恭子(32歳)が31歳の弁護士を演じている。これに対し、「GOLDEN GIRL」は、吉岡聖恵(30歳)が作詞作曲したものである。
知られている通り、いきものがかりの曲は、主にリーダーの水野良樹と山下穂尊という男性陣が書いている。ヴォーカルの吉岡が詞や曲を担当することは、多くない。彼女の曲がシングルになるのは、「キミがいる」以来、4年ぶりになる。今回は「女性に贈る応援歌」がコンセプトのシングルだから、ドラマの主人公と年齢も近い女性の吉岡の曲が採用された。そのように想像することはたやすい。しかし……。「応援歌」にふさわしく軽快で明るい曲調である。ミュージック・ヴィデオでは、吉岡が女性教師、スーパーにいる主婦、通勤するOLなどのコスプレをして踊る。頭の両脇から両手を前へ、左右へと振り下ろす応援団風の振り付けもある。ちょっとコミカルで楽しい内容だ。
とはいえ、「GOLDEN GIRL」という曲自体は、吉岡が頑張る女性主人公になりきって歌ったのとは、微妙に違っている。詞の主人公は、頑張っている「君」だ。彼女について、一番の味方でいたいと思っている語り手の視点から歌われている。語り手は「君」のそばにいたいと思っているのだから、恋人か彼女のことを想う男性かもしれないが、二人は恋バナをする仲のようだから、女友だちと考えたほうがより自然かもしれない。いずれにしても、詞の主人公自身が心情を吐露するのではなく、第三者が彼女のことを思いやる曲になっている。吉岡が自作曲を歌っているのだけれど、頑張る女性の自己表現ではなく、ワンクッションある表現なのだ。
いきものがかりには、吉岡の等身大に近そうな女性視点の曲もあるが(最近では『I』収録の水野作「なんで」など)、「風が吹いている」のように一人称が「僕」である曲が多い。もともと歌い手の吉岡に対してワンクッションある曲が、このユニットでは主流なのだ。いきものがかりの曲として、男性陣の作品と並んだ時のバランスを考えてのことだろう。吉岡が書く曲も「僕」をしばしば使っている(『I』の「東京」とか)。したがって、ワンクッションおいた主人公という意味では、「GOLDEN GIRL」で用いられた「君」も、「僕」のヴァリエーションとみなせる。
吉岡聖恵のヴォーカルには、目立った癖がない。はきはきとした声で素直に張って、言葉がわかるように歌う。いきものがかりに関しては、アップテンポな曲でも言葉が聞きとれないことはあまりない。メロディと詞の両方が、リスナーに届くように作られている。その詞で「僕」が多用されているのはなぜか。