TM NETWORKによる新たな発明 “シアトリカル”なコンサート演出とは?

 小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登による3人組ユニットTM NETWORKが、全国10公演をおこなったホールツアー『TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end』におけるシアトリカル(演劇的、劇場的)なコンサートが話題を集めている。

<参考レポート>
●Yahoo!:SF映画級の驚異のシアトリカル体験! ~TM NETWORK30周年コンサート報告書

●JAPAN TIMES:TM Network at Fuchu no Mori Art Theater

 TM NETWORKといえば、一般リスナーのイメージはヒット曲「Get Wild」や「Love Train」、アニメ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」のイメージが強いだろう。

 しかし、彼らはデビュー当時の80年代初期より、誰よりも先んじて新しい試みを、コンサートやパッケージアイテム、ブランディングに積極的にとりいれてきた先見性あるユニットなのだ。

<TM NETWORKによる先見性を感じられる数々の試み>
●演出された架空のキャラクターを演じるロックショーの構築(1984年〜)
●全国レコードショップでのゲリラ的開催なビデオコンサート(1984年〜)
●レーザー光線やムービングトラス、スターライトを使った照明演出(1984年〜)
●『VAMPIRE HUNTER "D"』&『シティーハンター』などアニメタイアップ(1985年〜)
●会場を音で包み込むサラウンドシステム(1986年〜)
●MIDIシステムによりキーボード演奏に合わせて照明をリアルタイム操作(1986年〜)
●洋楽アーティストである、The Wild Bunch(後のMassive Attack)、Warren Cuccurullo(Duran Duran)、Nile Rodgers、Bernard Edwards、Jellybean、Brad Gillis(Night Ranger)、COMMONなどとのコラボレーション(1986年〜)
●莫大なコンサート制作費を補完する為の企業タイアップ(1988年〜)
●小説×アルバム×コンサート×アニメのメディアミックス(1988年〜)
●ミュージカル風なコンサート(1988年〜)
●衛星を使った全国同時生中継ライブビューイング(1988年)
●ゲーム(ファミコン)とのコラボレーション(1989年)
●ヴォーカルトラックのみ残し、後は海外有名プロデューサーに自由に改変して頂くリプロダクションアルバムの制作(1989年)
●アーティスト名のリニューアル&CIの変更(1990年)
●作詞家に月9ドラマで活躍する脚本家である坂元裕二の起用(1990年〜)
●シンクラヴィアによるハードディスク・レコーディング(1990年〜)
●ハイレゾ(CDよりも高音質)を意識された作品制作(1990年)
●ツアー同行レポの小説化(1991年〜)
●コンサートで、アナログDJセットを設置(1991年〜)
●終了コンサートでのNHKでのニュース放送との映像連動(1994年)
●メンバーによるプロジェクトの裏側を解説するドキュメンタリー小説の執筆(1994年〜)
●インターネットを使ったCD発売前の無料配信(2000年)
●メンバーとオーディエンスの間に存在する、電圧制御によって透明になったり映像が映ったりするスクリーン=UMUの使用(2000年)
●洋楽を中心としたエレクトロポップ、ニューウェーヴ、ヒップホップ、AOR、ディスコミュージック、ファンク、ユーロビート、ハードロック、ヘヴィメタル、ハウス、プログレッシヴロック、フォーク、トランス、エレクトロ、EDMなど、あらゆる音楽ジャンルを網羅したサウンド構築(1984年〜)

 昨今、ボカロシーンやロックシーンなどで話題となっている、音楽を軸とした小説やアニメとのメディアミックス、スピーカーを増設するサラウンド・ライブ、同時生中継なライブビューイングを80年代におこなっていた事実はもちろん、家庭ではまだ電話線からのダイヤルアップが普通だった2000年に、ネット上でのシングル曲の先行無料配信を実現させていたなど枚挙に暇がない。

 そんなTM NETWORKの新たな発明が、2時間のSF映画のような感動を与えてくれる、シリーズ化されたシアトリカルなコンサート・パフォーマンスだ。

 そもそも今回のプロジェクトのはじまりは、日本武道館でおこなわれた『-Incubation Period-』公演(2012年)にさかのぼる。その続編がさいたまスーパーアリーナでの『FINAL MISSION -START investigation-』公演(2013年)であり、そして今年全国10公演で開催された『the beginning of the end』へとつながっていく。作品は後に順次Blu-ray/DVD化され、『FINAL MISSION -START investigation-』では小室哲哉による副音声的な解説もされている。

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