ふくりゅうの30周年コンサート分析
TM NETWORKによる新たな発明 “シアトリカル”なコンサート演出とは?
なかでも注目したいのが、今回のツアーにおける、イントロダクションな映像が映し出されたスクリーンが透過した瞬間に、眼前に最新のミュージックビデオ『LOUD』の世界観そのままに、宇宙船内部をイメージしたセットがあらわれたことだろう。
39枚目となる『LOUD』のミュージックビデオは、昨年さいたまスーパーアリーナ2DAYSでおこなわれた、『FINAL MISSION -START investigation-』のエンディングシーンからはじまる。物語は、地球を調査する為に訪れた3人の潜伏者であるTM NETWORKが、1950年代のアメリカでのひと騒動をくぐり抜け、トレイン型タイムマシンのような宇宙船へ乗船するシーンが描かれいている。小室曰く「311以降に作った楽曲のひとつで、直接的ではないが311のときに感じた想いで作った」とのことだ。
プロデューサーである小室はプロジェクトについて「ストーリーは僕自身で文章化しています。脚本も、海外ドラマや映画のようにシリーズごとに続いていきますす。海外のEDMシーンで盛り上がっているような、ダンスミュージックとシアトリカルなコンサートを掛け合わせた演出で魅せる音楽ユニットは日本では珍しい存在だと思います。ぜひ若手アーティストにも継承して欲しいカルチャーですね」とコメントしている。
小室は、シアトリカルな演出の影響については「もともとプログレッシヴロックが好きで、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』のライブに感銘を受けました。社会の抑圧を壁に例えていて、ステージ上にだんだんと壁を積み上げていく大掛かりなパフォーマンスが話題となったんです。びっくりしますよ、壁でメンバーが見えなくなっちゃうんですから(苦笑)」と語っている。
そもそも、TM NETWORKは、本来1984年のデビュー時には、MTVムーヴメントの盛り上がりから映像メディアへの可能性を確信した結果、コンサート活動を封印し、シアトリカルな演出をほどこした映像パッケージ商品のみの活動を夢見ていたユニットである。しかし、80年代初頭は、ビデオパッケージは高額で流通数もそれほどではなく、その試みは成功しなかった。