「ポップスには種も仕掛けもある」マキタスポーツが語る“ヒット曲の法則”

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各方面の音楽人から支持・注目を集めるアーティストでもあるマキタスポーツ氏

 ミュージシャンの形態模写、作詞作曲モノマネなどを得意とし、昨年アルバム『推定無罪』でスピードスターレコーズよりメジャーデビューしたアーティスト。音楽ファンからの注目も高まるマキタスポーツ氏が、1月30日に『すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考)』を出版した。

 同著では、過去のヒット曲たちに共通している楽曲の構造や歌詞などを分析し、彼独自の視点から言語化しているマキタ氏。今回は「印象批評」と「構造分析」をミックスさせた視点から、"ヒット曲の法則”をユーモラスに語っていただいた。

なぜ、カノン進行は一発屋を生むのか?

――まずは同著で一番重要なキーワードでもある「カノン進行は一発屋を生む」という言葉について

マキタスポーツ(以下、マキタ):カノン進行は300年ほど前、バロック音楽の時代から存在するコード進行で、ヨハン・パッヘルベルという、バッハの師匠筋にあたる方が作ったものです。この「カノン進行」という言葉自体はもとからあったのですが、僕がこの本で「カノン進行は一発屋を生む」っていう強い言葉を使って言いたかったのは、「カノン進行を応用した曲はヒット曲の中に結構あるぞ」ということ。一発屋を生むという部分は、リップサービスとして考えてください(笑)。都市伝説ではないですが、そんな切り口で考えてみることも出来なくはないよという意味で、あえて文章上そう書きました。

カノン進行というのは、規則性があって、ベースラインが「ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ」「ソ」を経過して「ド」に戻るというのを繰り返しているコード進行です。これを聴けば誰しもが心地いい気分になることを約束されるコード進行というもので、安心、安全、安定した音楽を作るための仕組みともいえます。

 もっとわかりやすくすると、例えば「ド」の音が家だとすると、どこかに遊びに行っても、必ず家である「ド」に戻ってくるということですね。寄り道をしたとしても、決まったコースを辿り、必ず家に戻る。聴き手もそれをわかって聴けるので、安心して聴ける曲になるルーティン的なコード進行で、「大逆循環コード」という呼び方もあります。

――この魔法のような要素が、ポップスのヒット曲にはたくさん入っていると。

マキタ:商用の音楽には、コード進行っていう面にのみ光を当ててやると、使われがちなコード進行というのが、他にもいくつか存在します。「ドラマティックマイナー」もそうですね。これは自分で勝手に名づけたものですが、「Am→F→G→C」という90年代以降のヒット曲で多用されたコード進行のことです。あと、この本にはないですが、「未練コード」という、日本人の情緒をくすぐられるようなコード進行もあります。

――マキタさんはこれらの曲に対し、同著内で「置きに行った」という表現をされてます。

マキタ:僕は、ポップスって「大いなる予定調和」的なものだと思うんです。すごく安心というか、安全というか、「範囲内からはみ出さない」ということが、不文律じゃないけどあるように思えて。で、ある程度自分で曲を作ったり、ポピュラーミュージックの中身を分析していくと、曲というのは、その範囲からはみ出さないように、骨子を作っていることがわかってきたんです。そこからはみ出して突飛なことをやってしまうと、多くの人がその曲を聴きたいという気持ちになりづらいから、範囲の中で作るんだと。つまり、そうしないと売れないからなんだと気づきました。

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