Spotify日本上陸直前!  世界の音楽市場に与えたインパクトを改めて検証

 2013年は世界の音楽市場にとって間違いなく転機となる一年だった。その主役はこれまでリアルサウンドでも幾度となく取り上げてきた Spotify。このスウェーデン発の新しい音楽聴き放題ストリーミングサービスは、昨年にサービス対象地域を17カ国から55カ国へ拡大。一般認知の高まりとユーザーの増加を受け、世界各国のマーケットで存在感を示し始めている。今回は2月13日現在で明らかにされている各国の音楽売上データをもとにSpotifyの現状をお伝えする。

 はじめにご紹介するのはイギリス。英国レコード産業協会のデータによるとCDアルバムのセールスは2012年の6940万枚から6060万枚へと12.8%減少、4年前のおよそ半分の売上となった。ダウンロード(アルバム)は6.8%成長し3050万枚から3260万枚。LPなども含めた総アルバムの売上は1億50万枚から9400万枚へと6.4%減少し、金額に換算すると8億80万ポンドから7億7210万ポンド(約1345億2947万円)へ3.6%減じた。そんな中 ストリーミングサービスの売上は7700億ポンドから1億300ポンド(約179億4656万円)へと33.7%増加。ストリーミングサービスの二桁成長によって、CD減少分の売上をほぼカバーするに至っている。売上に占めるシェアも2012年の7%から10%へと拡大しており、今後もこのトレンドは続いていくものとみられる。

 続いてはSpotifyがサービス開始直後から対象地域だった北欧諸国。ここではスウェーデンとノルウェーを紹介するが、注目すべきは両国とも音楽市場が今なお成長しているという点。前述のイギリスはCD減少分をSpotifyが補填するという形であったが、スウェーデンとノルウェーの両国ではSpotifyが牽引役となり現在でもマーケットが拡大しているというのである。それではまずスウェーデンからデータを見てみよう。国際レコード・ビデオ製作者連盟の発表した資料によると2013年の音楽市場全体の売上は昨年から5%増加し9億9120万スウェーデン・クローナ(約159億3166万円)。そのうちCDアルバムの売上枚数は前年から31.3%減少し580万枚。金額で言うと前年比30%減少の2億2950万スウェーデン・クローナ(約36億8563万円)。ダウンロードの売上も22.6%減少し、4410万スウェーデン・クローナ(約7億636万円)。一方でストリーミングサービスの収益は前年から30%アップし7億590万スウェーデン・クローナ (約113億3632万円)、いまでは音楽売上全体の71.2%を占めている(ちなみにスウェーデン音楽市場は3年連続でのプラス成長となり、過去5年間で収益が27%増加している)。

 同様のことはノルウェーにも言える。同国の音楽市場は昨年から11%成長し、6億300万クローネ (約102億8000万円)に拡大。ストリーミングサービスは前年から60%増加し3億9400万クローネ (約67億1496万円)、市場全体のシェアの65.3%を占めている(CDの売上は前年比で12.4%減少)。早くからSpotifyが根付いた北欧諸国では、音楽とはもはやストリーミングで聴くものに変わっているようだ。

 最後にアメリカ。同国の音楽市場については以前にもリアルサウンドで触れているが(記事「米国で音楽ダウンロード売上が初めて減少 音楽記録メディアは今度どうなる?」参照)、CDと共にダウンロードのアルバム売上も減少傾向が続く。ストリーミングサービスに関してはSpotifyの他にネットラジオ最大手PandoraやiTunes Radioが存在しており、激しい火花を散らしているのが現状だ。Pandoraに関しては昨年12月に利用動向をまとめた資料がリリースされており、それによるとアクティブリスナー数は前年比13%増の7620万人、視聴時間(/月)は前年同期比13%増の15億8000万時間になるという(売上については明らかにされていない)。

 ここまで見てきたようにSpotifyが音楽市場を救った北欧のような例もある一方、アメリカのような巨大マーケットを抱える国の場合だと、リスナーがストリーミングに移行することによる収益率低下など課題も多く残っている。またドイツも権利関係の問題からSpotifyが今ひとつ存在感を示せずにいる。Spotifyは今年にも日本上陸が噂されているが、果たしてどこまでサービスが普及していくのか。今後の動向に注目である。
(文=北濱信哉)

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