クラムボン・ミトとbambooが考える“悪巧み”の重要性 バンドを長く続けるために守るべきことは?

ミトとbambooが考える「悪巧み」の重要性

 クラムボン・ミトによる、一線で活躍するアーティストからその活動を支えるスタッフ、エンジニアまで、音楽に携わる様々な”玄人”とミトによるディープな対話を届ける対談連載『アジテーター・トークス』。第四弾となる今回は、クラムボンがCAMPFIREで『クラムボン×岩井俊二「日比谷野外音楽堂ライブ」映像化大作戦』プロジェクトをスタートさせたことを記念し、同社のキュレーターであるbamboo(milktub)との対談を行なった。

 bambooは自身のバンド・milktubでもアニメ『有頂天家族2』のオープニング主題歌シングル『成るがまま騒ぐまま』を4月26日にリリース、株式会社キッチンガイズファクトリーの代表として社内ブランド「OVERDRIVE」でゲーム&音楽のプロデュース業を手がけるなど、音楽業界の表と裏で活躍するクリエイターでもある(参考:ニューロティカ&bambooが考える、老舗バンドこそクラウドファンディングを使うべき理由)。この対談では、両者の関係性からミトとbambooという異端な音楽家の活動論、そして音楽業界の変化について、じっくりと語り合ってもらった。(編集部)

第一弾【クラムボン・ミト×大森靖子が考える、ポップミュージックの届け方「面白い人の球に当たりたい」】
第二弾【クラムボン・ミト×『アイマス』サウンドP内田哲也が語る、アイドルアニメ・ゲームに“豊潤な音楽”が生まれる背景】
第三弾【花澤香菜は声優&アーティストとしてどう成長してきた? クラムボン・ミト×花澤マネージャーが語り合う】

「クラウドファンディングって、何回も使える魔法じゃない」(bamboo)

ーーミトさんとbambooさんは、それぞれクラムボン、milktubとしても活躍しながら、バンド外での活躍も著しいお二人です。まずは両者の関係性について紐解いていければと思うのですが。

bamboo:食い道楽繋がりです(笑)。たまたま食事会で一緒になった縁や、食い道楽たちが台湾旅行へ行く会で一緒になったり。でも、うち(milktub)のCDもOVERDRIVEのゲームも買ってくれてたんだよね。

ミト:bambooさんのことは、彼が関わっているアニメ・ゲーム界隈に知人が多かったのと、音楽自体が好きだったのでもちろんその前から知っていました。以前はとあるゲーム会社にいらっしゃって、ゲームディレクターであり音楽も作詞もやっていたので自分で起業し、アダルトゲーム業界で良いゲームをたくさん自分で作ってらっしゃる存在で。

bamboo:バンドやりたくてゲームメーカーを立ち上げたからね(笑)。

ミト:不思議な経歴だけど、基本アダルトゲームに触らない僕でさえ、そのメーカーとゲームタイトルを知っているくらい有名な会社ですからね。

bamboo:バンドもののゲームをいっぱい出しているから、ミュージシャンのファンが多いんですよ。ちばぎん(神聖かまってちゃん)のベース(Fender 60th Anniversary Precision Bass)に書いている「スェンダー」という文字はうちの『キラ☆キラ』が発祥ですから。あと杉本善徳くんもか。この間はOVERDRIVEのフェス『OVERDRIVE 10th FES ~LAST DANCE~』で、ポップス界からミト君にお花をいただいて、パンク界からは先輩・ニューロティカに、スカ業界からはGELUGUGU、ヴィジュアル系から杉本君と、これだけのメンツでフェスできるなというくらい豪華で(笑)。その花の送り先がアダルトゲーム屋のライブだという。

ミト:bambooさん以外は起こせない点と点のつながりですね。

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ーー今回の企画については、どの段階からクラウドファンディングを使うという決断に至ったのでしょう。

ミト:野音ライブが年始に決まり、チケットの販売をスタートさせたら先行受付の段階でキャパシティの倍くらいの応募をいただいて、一般発売も即完売してしまったんです。クラムボンのことを追ってくれている方なら、私たちにとって野音のライブがどれだけスペシャルかをご存知だと思いますし、それが8年ぶりというのもあってのことでしょう。とはいえ、チケットを買えなかった方にも何かしらを提供したいなと考えていたときに、OVERDRIVEがディファ有明でフリーライブをするというプロジェクトを見て、初日で70%を上回っていて驚いたんです。

bamboo:これまでの積み重ねもありますからね。

ミト:とはいえ、bambooさん自身はそこまで表舞台の方ではない、というと語弊がありますが、OVERDRIVEのクリエイター・プロデューサー・プロモーターという立場で裏方として発信を続けている人に、ここまで瞬間的な数字が叩きだせるのかと。そこから興味を持って調べる中で、bambooさんがメディアでもCAMPFIREのことを話しているのを知り、2人で会うことになったんです。いざ会って相談を始めたら、会話の途中でPCを開いて、話していて1時間もしないうちに企画書が出てきたんですよ。「なんだこの人!」と思って(笑)。

bamboo:ミト君から連絡をもらった段階で何かの案件だろうなとは思っていたので(笑)。僕はクラウドファンディングをこの5年くらい定期的に使っていて、おそらく日本のミュージシャンでは一番使い倒している人物だと自負しています。クラウドファンディングについては、以前こそ集金ツールのように受け取られがちでしたが、現在はお客さんと一緒に何かを作るというプロモーション的な意味合いも強くなっていると感じますね。

ーーなるほど、役割や世間の認識が変化しつつあるということですか。

bamboo:とはいえまだ未完成であり、現在は色んな可能性を見出しつつある段階だと思います。僕は相談してくるミュージシャンに対して、自分のノウハウをひた隠しにするつもりもなくて。ミト君との打ち合わせでも、話を聞きながら「こういうこともできる?」とアンケートを取りながら企画を作ったんです。クラウドファンディングは得体の知れないもので不安も大きいし、そのなかでも「何をしたらいいの?」と「支援はちゃんと集まるの?」という部分を気にするので、プロジェクトやリターンの内容を企画立てして見せて「このくらい達成すれば大丈夫じゃない?」と理解してもらうんですよ。

ミト:いま公開されているプロジェクトページは、プロットの時とほぼほぼ変わってないんですよね。文章におけるトーンや物事の解釈は、うちらを一度通しているのでそれぞれの言葉になっていますが、それ以外はほぼほぼ同じで。

bamboo:バンドのパブリックなイメージって色々あるし、それに沿って「アーティストバリュー」が間違っていないか、お客さんにちゃんと熱意が伝わるかどうか、カッコ悪く映らないかというのを客観的に判断しないといけないんです。その点において一番良かったのは、事務所が協力的だったこと。アーティストの仕事はお金を集めることじゃなくて、いい音楽を作っていいライブをすることだから、そこに集中してほしいんです。そんな時に必要となるのが事務所との連携で、今回はそこがスムーズだったので助かりました。

 あと、僕は絶対に関わったアーティストのプロジェクトに関しては、面通しは絶対するんですよ。僕はミュージシャンとしての感覚もあるわけで、その目線でも伝わるような言葉を使って理屈の通った内容を伝えるんです。今回はミト君以外のメンバーと面識がなかったので、(原田)郁子ちゃんや伊藤(大助)君ともしっかり会って話しました。

ーーメンバーとはどのような話を?

bamboo:まずは「利鞘を取らない方がいいよ」ということ。クラウドファンディングって何回も使える魔法じゃないし、一般発売はせずにこの時だけのお祭りとして楽しむスタンスでやったほうがいいよと。まずは一度日比谷野音という思い入れのある場所に関して、ライブに行くだけじゃなくて、行く前も、行ってから数カ月後までも楽しめるツールとして使ってもらいたかったから。あと、クラムボンはキャリアの長い武道館バンドでもあるわけで。活動期間が長くなると、新しいものに対して踏み込んでいいか悩むと思うし、失敗するケースもなくはない。でもちゃんと理解したうえで挑戦した。見え方が気になるのもわかるけど、それを乗り越えて世に問うことって、アーティストと言われる存在の人にとって非常に重要だと思うんですよ。

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ーーミトさんはもともとクラウドファンディング自体に興味・関心はあったんですか?

ミト:4〜5年前から話題も耳にしているし、アメリカのKickStarterには何回か出資しているんです。例えば、フィルモア・イーストの照明チームでおなじみ、ジョシュア・ホワイト率いるThe Joshua Light Showのプロジェクトとか。 1960年代にオイル・アートを映しながら照明を出すという演出をしていた人たちが、新しい機械を作るというので、それに投資してサクセスしたのが最初のクラウドファンディング体験です。そこからCAMPFIREのアカウントも持っていて、ドラびでおさんのレーザーギター復旧プロジェクトや食系のものにも何度か出資しました。その中で見えてきたのは、明らかにサクセスするものとしなさそうなものがわかるということ。どこまで、どれぐらい意識的なのかというのがはっきり見えるんですよね。

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