VIVA LA ROCKプロデューサー鹿野 淳が語る、フェス2年目の挑戦「フリーエリアをなぜ増強したか」

「フリーエリアがそのフェスのプロモーションになる」

ーー今年の新しい試みについてもお伺いできればと思います。今年はステージ数が一つ増えて「TSUBASA STAGE」が設けられました。これはどういうステージになるんでしょう?

鹿野:VIVA LA ROCKは室内にステージが3つあります。一番大きいステージは2万人以上のキャパシティがあります。2つめは1万人規模、3つめは2千人規模です。しかし、2千人規模と1万人規模のギャップは、出演する側も見る側もブッキングする僕にとっても非常に大きいものなんです。それを何とか埋められないか、という話を皆さんからもいただいたし、自分にとっても頭の痛い問題でした。いろいろ試行錯誤をして、諦めかけていた時に、野外の入り口にある広大なスペースで4千人規模のステージが作れる、という話になった。去年も「GARDEN STAGE」というステージがあり、野外でも音を出すことが許されていたので、今年も近隣にご迷惑を掛けずに、フェスとしてインフラを広げられることになった。音楽がより発見の場になるステージを、ということで作ったのが「TSUBASA STAGE」です。

ーーこのステージは、会場の外、入口付近に設けられる野外ステージです。チケットを買っていない人でも観れるのですか?

鹿野:はい。タダで観れます。

ーーそういう意味ではTSUBASA STAGEとGARDEN STAGEは、フェスのラインナップの一環でありつつも、通りすがりの方々にも届けられるステージ、という意味合いになりますね。

鹿野:これは、今の時代の音楽の聴かれ方を信じた上で判断しているつもりです。簡単に言うと、フリーエリアがそのフェスのプロモーションになるということを信じている。今の音楽のプロモーションはYouTubeをプラスに捉えないといけない状況で、世界的な傾向としても、沢山ある音楽の中から音楽リスナーに選択権を持っていただき、負担の少ない形で選択したものに対価を払っていただく、という方向になっているのではないかと思います。それと同じことをフェスティバルをやろうとすると、フリーエリアでも豊潤に音楽を鳴らしていき、「そういうエリアのあるフェスは素敵だな」と思ってお客さんがチケットを買ってくれることを信じて、今年はフリーエリアをかなり増強しました。それが去年からの一番派手な変化ですね。

ーーそれ以外ではどういう点がありますか?

鹿野:今年はステージの演出をかなり頑張りました。入ると「うわっ」と感じるようになってると思います。これも世界中の音楽フェスティバルが、EDMシーンを筆頭に、その場の演出が主役性を持ちつつあり、それがスタンダードになりつつあることへ、きちんと順応したいという気持ちが含まれています。そして、動線の難解さ、クロークの少なさも改善しました。かなり抜本的な増強をしたつもりです。

ーー去年のVIVA LA ROCKのユニークなポイントであった音楽同人マーケットの「オトミセ」ですが、今年もやりますか?

鹿野:やりますが、まだそれほど定着するとは思っていません。しかし、「オトミセ」に参加してくれた方からは、ロックフェスでコミケやM3のようなことができる、それまでになかった自分の音楽を提示する場所をロックフェスで作ってくれたことが嬉しいとは言っていただいています。今年は、もっと気づいてほしいし、そういう動きがもう少し広がってほしい。なので、改善もしました。具体的に言うと、去年は「オトミセ」のあった高階層のエリアは人が辿り着きにくかったんですけど、今年はそのエリアに、CD販売やサイン会やトークブース、さらにはスペースシャワーやMUSICAのブースなどを同時に陳列することによってお客さんが回遊しやすいエリアにします。単に廊下に机が並んでいるだけではなく、一つのフェスの空間なんだ、というデザイン的な演出も施しています。きっと「ここでひとつのイベントが行われている」という意識を視覚的にもお客さんに持っていただけると信じています。

――去年よりも様々な場所がグレードアップしているわけですね。

鹿野:ただ、音楽フェスティバルとして、2年目の難しさは感じているところです。例えばブッキングに関しても、1年目はご祝儀的に興味を持っていただけたり出演していただける部分があります。素晴らしいフェスは3〜4年めから定着期を迎える。その定着性とご祝儀的な部分の両方がないのが2年目です。そこでVIVA LA ROCKは守るだけでなくちゃんと攻めたいと考えました。それが、さいたまスーパーアリーナができて15年の中で、ステージを作ったことがない、音を鳴らしたことがない場所に「TSUBASA STAGE」というステージを作ることでした。これは最大級の攻めであるとともに、大きなリスクでもあります。

――どんなリスクがあるんでしょうか?

鹿野:新しいステージでは1日に3時間くらいしかやらないんですけれど、そこで演奏をしている時間は、フェスの入退場口が会場として塞がれてしまうんです。なので、また新しい動線を作らなければいけない。もともとさいたまスーパーアリーナは5階まである複雑な立体構造なので、それをさらに難解なものにしかねない。そういうことも含めて、正直今は生きた心地がしない(笑)。「運営大丈夫か?」という言葉が夢の中で何度も出てくる日々を送っています。でも、フェスのリアリティとしては、最終的にお客さんにとって楽しくないものになったり、自分がやりたいことを実行できなかったりしたら、それまでなんです。なので今年は大きく攻めました。2年目であるにもかかわらず「ゼロからイチ」ということがとても多いフェスになっていますね。(後編に続く)

(取材・文=柴 那典)

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■イベント情報
『VIVA LA ROCK 2015』
公演日:2015 年 5 月 3 日(日)・4(月・祝)・5 日(火・祝)
会場名:さいたまスーパーアリーナ 開場 9:00 / 開演 11:00 / 終演 21:00 予定
チケット代:1日券 ¥10,000(税込・WELCOMEDRINK1杯付)
2日券(5月3日&4日・5月4日&5日) 各¥18,000 (税込・WELCOME DRINK1 杯付)
3日券 ¥24,000(税込・WELCOMEDRINK1杯付)
年齢制限:小学生以上チケット必要(小学生未満は保護者同伴のもと、入場無料になる)

3日通し券販売中
・イープラス
紙チケット販売ページ ※先着順の発売。

スマチケ販売ページ ※クレジットカード限定、先着順の発売。

・ローチケ
チケット販売ページ

・ぴあ
3日通し券販売ページ
2日券(5月3日&4日)販売ページ
2日券(5月4日&5日)販売ページ
1日券販売ページ

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