VIVA LA ROCKプロデューサー鹿野 淳が語る、ロックフェスの「物語」と「メディア性」

 2014年5月3日から5日までの3日間、さいたまスーパーアリーナにて新たなロックフェスティヴァル「VIVA LA ROCK」が開催される。

 フェスのプロデューサーをつとめるのは、音楽雑誌『MUSICA』発行人の鹿野 淳氏。これまで「ROCK IN JAPAN FES.」「ROCKS TOKYO」など、数々の邦楽フェスの立ち上げに関わり、当事者としての立場でフェスに関わってきたキャリアの持ち主である。今回は当サイト連載「ロックフェス文化論」の特別編として、音楽シーンにおけるフェスを巡る状況、また自ら手掛けるフェスの設計思想を語るインタヴューを、前後編にわけて掲載する。

 第一回のテーマは、ロックフェスと「物語」について。「VIVA LA ROCK」の公式ページには、昨年7月の開催発表の際に「ロックフェスティヴァルの新しい物語を、どうかみなさん一緒に作って下さい」――と書かれている。では、ロックフェスにとっての「物語」とはどういうものなのか? その背景にあるフェスの「メディア性」について、語ってもらった。

フェスで大事なのは、「日程」と「場所」

――まずは「VIVA LA ROCK」を立ち上げようと考えたきっかけについて教えてください。

鹿野:フェスを自分が中心となって立ち上げるのは4つ目なんです。で、案の定、「鹿野は何があってもフェスをやりたいんだな」と皆さんから言われたりして。「チクショー」という気持ちもあるんですけど(笑)、たぶんその通り、僕はフェスをやりたいんだと思うんですよね。何故フェスをやりたいかというと、自分がやりたいフェスがまだあるから。一昨年までやっていた「ROCKS TOKYO」が内輪もめでなくなってしまったもので(苦笑)、フェスを立ち上げるチャンスが生まれたんです。そこで一緒にやろうと言ってくれたイベンターと話をしていったんですけれども、最初は野外も室内もいろんな選択肢が実はありました。そこで僕が一番こだわったのは日程だったんです。

――それは何故でしょうか?

鹿野:そもそもフェスで大事なのは、「日程」と「場所」だからです。まず、今から首都圏にメガフェスを立ち上げて、夏フェス戦線に入っていく意味合いが感じられなかった。それから他の地方、それこそ新幹線でも3時間以上かかる場所で新しいフェスを立ち上げないかという話をいただくこともありますが、フェスはやっぱりお祭りですから、その街の空気感をわかってない人間が外側から出てきて何かをやる意味合いも感じられなかった。そうすると必然的に場所も限られる。学生から退職後の方まで幅広い世代の層に向けてアジャストできる期間というのは、夏のお盆休み、年末年始、あとはゴールデンウィークしかない。で、今回、さいたまスーパーアリーナがゴールデンウィークの期間に会場を貸してくれることになりました。今後もこのフェスを続ける限り、5月の3日、4日、5日に関してはこの「VIVA LA ROCK」をやりましょうという約束を結ぶことができた。それがあって開催に至ったわけです。

――GWにさいたまスーパーアリーナで毎年行うということがまず確定したわけですね。

鹿野:さきほど話した通り、僕はフェスは場所とスケジュールが50%以上の重要さを占めるものだと思うので、そこで新しいチャンスと可能性を手に入れたところから始めました。いろんな話を聞いていると、まずアーティストのブッキングから始まるフェスやイベントも多いようですがーーつまり、このアーティストをブッキング出来たからフェスをやろうという発想ーーそれに関しては一切何もせず、開催することをまず決めました。

――会場側もフェスをやることに乗り気だったんでしょうか?

鹿野:そうなんですよ。たとえば横浜アリーナでは「WIRE」や「NANO-MUGEN FES.」が行われたりしているけれど、これまで、さいたまスーパーアリーナには地元に根づいた形で通年行われるフェスはなかったわけです。彼らのほうもそれを強く望んでいた。その気持ちが僕のところに伝わって来て、そこから話が始まった。だから、ただ単に場所を貸すだけではなくて、さいたまスーパーアリーナも自分たちのフェスとして一緒に考えていきたいという気持ちがあったんですね。これは本当にラッキーなことなんですよ。フェスにとって場所が味方か、もしくはあくまでも大家さんに過ぎないのか、この違いはいろいろな部分で大きい違いを生むんです。今回は会場とプロデュースする側が一体となっていろんなものを考えてやっていくフェスを新しく作れることになったので、それでやることにしました。

――毎年続けていくフェスをやるというのは最初からコンセプトとして決まっていたんでしょうか?

鹿野:そもそも僕はメディアの人間ですから、一回限りの開催のフェスをやるっていう選択肢はないんですよ。一回限りのフェスをやるっていうのは、基本的には金儲けのためか、もしくはチャリティや別の目的があるものだと思うんです。メディアの人間がイベントやフェスをやるっていうことは、それはすなわち、音楽を演奏する人と聴く人、つまりアーティストとリスナーとの媒介としてフェスをプロデュースするということなんです。そして、それを物語にしていくためには、一年だけでは実現しないんですよ。何年間かかけてやらなければそういうことはできないんです。そもそも僕は、一回限りのフェスとかイベントに関わるっていうことは今までもしたことないし、これからもたぶんないと思います。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる