ゲーマーを魅了する“魔力”は健在! 徹夜必至の歴史ストラテジー『Civilization VII』プレイレポ

2月11日、歴史ストラテジーシリーズの最新作『Sid Meier's Civilization VII』が発売された。およそ9年ぶりとなる作品である。
「Civilization」シリーズはターン制ストラテジーのなかで最も有名な作品であると同時に、ゲームデザイナーのシド・マイヤーの代表作でもある。
前作と打って変わってシンプルになったゲームシステムはとっつきやすく、全体的に楽しく遊べるものの、いくつか見過ごせない欠点もあった。まだ隅々までやりこんでいるとは言えない状態だが、現時点までで気づいた点について列挙していこう。

シンプルかつ大胆な歴史戦略ゲーム――「Civilization」に触れるなら今
基本的な設計はシリーズ通して変わらない。「Civilization」シリーズは、世界史に登場してきた偉人や指導者を選び、自らの文明を操作して、偉業を成し遂げることを目的とするストラテジーゲームだ。
プレイヤーはユニットに仕事を命じ、彼らが産出した食料や技術を使って国力と支配地域を増やしていく。効率的な内政によってライバル国家よりも早く成長して、武力で圧倒したり、外交を繰り返したりしながら、自分だけの歴史を紡いでいくのだ。

敵国の都市をすべて占領したり、自国が開いた宗教を世界中に広めたりするなど、いくつかの勝利条件が決まっているため、ただただ大規模な戦争をすればよいわけではなく(とはいえ戦争はもっとも簡単な手段ではあるが)大胆な戦略でもって他国を出し抜いていくことも求められるという奥深いゲームシリーズなのだ。
さて、そんな「Civilization」シリーズの最新作『Civilization VII』だが、前作『Civilization VI』のシステムが複雑すぎたという点を反省したためか、かなりシンプルになった。

まず、都市計画について。前作ではひとつのマスにひとつの建物しか建てられなかったが、今回は同じ属性の建物であれば同じマスに詰めて建てられるようになった。都市計画をスムーズに進められるようになっただけでなく、自国の工業地帯にみっちりと建物が集い、風景としてとても見応えのあるものになっている。

続いて、外交政策もわかりやすくなった。前作は金品のやり取りによって機嫌を窺うことで他国との距離感を図っていたが、今作は「影響力」というリソースに集約されている。影響力さえ払えば他国にスパイを送ることができたり、相手の戦争疲弊を増やしたりもできる。Paradox Interactiveの『Stellaris』にも似たような要素があったので、上手く借りてきている感じがした。

また、本作のフィーチャーとして蛮族が廃止されたのも大きい。まだ内政もままならない序盤のうちからワラワラとどこかからやってきて国を破壊しようとするお邪魔者が消えたのは、間違いなく良くなった点と言えるだろう。
その代わりに「独立勢力」という前作の都市国家と蛮族をあわせたような勢力が登場する。彼らは影響力さえ払えば友好関係を結ぶことができるし、なんなら戦争にも加担してくれるほど心強い味方になるのだが、敵対関係のまま放っておくとこちらの都市を攻撃してくる。こういった具合で、前作にあったいくつかの要素を上手く統合しているのが本作の良いところだ。

都市はほぼワンクリックで大きくなっていくし、外交もわかりやすくなった。そして、エマージェントナラティブと開発が呼称するイベントシステムのおかげで、ゲーム全体にストーリーイベントやランダムイベントが発生し、物語性を感じながら遊べるようにもなり、一般的なRPGのような感覚も覚えた。
これらいくつかの施策により、初心者でもすんなり入っていけるような作品にはなったのだが、気になる点もいくつかあったのは事実だ。

今作では時代が「古代」「探検」「近代」と大きく三つに分けられている。それぞれの時代で「レガシーパス」というメインミッションに相当する一連の目標をこなすことで、次の時代にボーナスポイントを持ち込むことができるという作りだ。
この施策のおかげで、序盤に走った文明にいつまでも追いつけずに中盤以降はただ付き合わされることがなくなり、すべての文明に勝ち目が残されるようになった。そして、指導者と文明それぞれの特徴を見比べてオリジナルのシナジーを作れるという楽しみも追加されたわけだ。

しかし、それらの裏返しとして、結局のところレガシーパスを最速でこなすという目標に縛られているとも言えるし、指導者と文明のシナジーはゲーム性こそ増したが、チグハグな見た目になってしまっているのは否めない。
また、ゲームのボリュームも問題だ。近代だけをサクッと遊ぶならまだしも、すべての時代を跨いで遊ぶとなると、かなりのボリュームがある。マルチプレイで誰かと集まって遊ぶ際は一晩では終わらないだろう。

1プレイを終えると、レガシーパスの達成度に応じて「記念品」という要素がアンロックされる。これはローグライトでよく見られるもので、各指導者に最初から軽微なバフをかけられるようになるのだ。
これ自体はゲームプレイが無駄にならなかった感じがしてうれしいのだが、1プレイがとても長いゲームゆえに、解禁される伝統の数が見合っていないように感じてしまった。
といった具合で、現時点でもいくつか欠点は見受けられるが、すべての仕事をそっちのけで、何時間も本作に縛り付けられたことも事実である。“One More Turn”と呼ばれるとおり、ゲーマーの心を掴む強烈な魔力は今作にもしっかりと感じられた。忙しい方はなんとか時間を作って――暇な方なら言うまでもなく――いますぐ買って遊ぶべき一本である。

なお、本作でもゲーム内百科事典「シヴィロペディア」は健在である。中立な視点から世界史の偉人や地域、イベントについて教えてくれるうえに、ちょっとニヤッとできるツッコミも入っている。ゲームに疲れたら読んでみてほしい。

©2024 Take-Two Interactive Software, Inc. Sid Meier’s Civilization, Civilization, Civ, 2K, Firaxis Games, Take-Two Interactive Software and their respective logos are all trademarks of Take-Two Interactive Software, Inc. All other marks and trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.
ソリティアの旨味をデッキ構築ローグライトにMIX 群雄割拠のジャンルに切り込む新作『ロスト・パス』レビュー
新作ローグライトデッキ構築ゲーム『ロスト・パス』(原題『Stray Path』)を紹介。本作は『Slay the Spire』に…