“Avowed”というタイトルに込められた意味とは? 選択を迫られる大作RPG『Avowed』サウンドチームインタビュー

2月19日の発売を間近に控えるObsidian EntertainmentのRPG『Avowed』(PC(Steam)/Xbox Series X|S)。今回は先んじてサウンドトラックを制作したチームにインタビューをする機会を得た。
インタビューに答えてくれたのは、コンポーザーのヴィーナス・セオリー(Venus Theory)氏、プロダクションディレクターのライアン・ウォーデン(Ryan Warden)氏、シニアサウンドデザイナーのディラン・ヘアストン(Dylan Hairston)氏だ。大作RPGのサウンドを作り上げることがいかに難しいか、まざまざと体感したようなインタビューだった。(各務都心)
――メインテーマ楽曲「Avowed」が非常に心に残っています。ゲームのタイトルでもあるわけですが、こちらはどんな意味が込められているのでしょうか?
ライアン:Avowedというのは「誓った」という意味なんです。これはつまり、忠誠心を誰かに見せたとか、依頼に対して最善を尽くしたという意味でもあります。プレイヤーはこのゲームのなかで多くのチャレンジにぶつかるけれど、これらを完璧にやり遂げられるか、そしてそれが本当に正しいのか、ということを考えることになります。選択した結果によって責任を負うこともある……そんな意味をタイトルに込めました。
――メインテーマ以外の曲もいくつか拝聴させていただきましたが、どれも印象的で素晴らしかったです。これらのサウンドトラックを制作するうえで、インスピレーションとなったものは何でしょうか?
ヴィーナス:まず私が目指したのは、汎用的なファンタジー曲にならないようにする、ということです。今まで私が作ってきたのは実験的な音楽が多かったのですが、それらの要素を含めつつ、同時にこれがファンタジーRPGだとわかるようなポイントを目指しました。
――ゲーム全体でプレイヤーが聞くことができるサウンドについて、テーマやモチーフのようなものがあれば教えてください。
ディラン:それほどテーマは考えなかったですね。しかし、本作が「Pillars of Eternity」シリーズと世界観を共有していることもあって、それらの作品に登場する原則や原理を意識し、敬意を表しているのは間違いないです。
ライアン:あと、音響効果・音楽の両方において言えることを話しておきます。前提として、ファンタジーゲームにおいてはヒーローがいろいろな冒険をするでしょう。コンポーザーのヴィーナスが作った曲は、ヒーローが謎を解いていくという過程が描かれているんです。謎解きが進めば進むほど、より複雑で不思議な音作りが出てくるんですよ。この辺が我々の音楽の特徴だと思っています。

――それらの楽曲がゲームプレイのなかでどのような象徴を持っているのでしょうか?
ヴィーナス:我々の音楽は、場面によって変わります。たとえば草原のようなオープンスペースだと落ち着いた音が鳴り、重要なシーンではイベントを盛り上げるような音が鳴ります。
私もいろいろなゲームをやっていますが、感情を揺さぶるような曲が良いと思うんですよね。なので、キャラクターの感情を表すようなものでありつつ、同じテーマが何回も繰り返されないようにも注意しました。プレイヤーが選択した選択肢を表すような曲も入っています。たとえばこの曲は勇猛な場面で流れるように……この曲は不可思議な場面で……といった感じですね。このゲームを2回3回と繰り返して遊んだとき、聞こえてくる曲が変わってくるはずですよ。
ディラン:音響効果についてですが、プレイヤーのエモーションにも影響していると思います。たとえばプレイヤーがどういう環境にいるかによって変わるんですよ。村の中は安心感を表していて、鳥が飛んでる音や、和やかな風の音が聴こえてきます。
しかし、ダンジョンに入るとウジャウジャと蜘蛛が出てきたり、恐ろしい生き物が襲ってきたりしますよね。その感じを表現しました。見えなくてもそこに何か危ないものが存在するという恐怖感です。リアルな、没入感のあるSEというのが大事で、階層的な音の重ねあいを意識しました。

――サウンドトラックで使用される楽器の編成を教えてください。特にメインテーマでは弦楽器の音色が印象的ですが、どんな楽器を使用されていますか?
ヴィーナス:ここで種明かしをすると、ほとんど実際のオーケストラは使っていないんです(笑)。シンセサイザーを使って作った曲ばかりで、実際にオーケストラを使用したら出ないような音作りになっているんですよ。本当に、この曲をそのままオーケストラでやると130人以上は必要でしょうね。
しかし、生音を使ったものもありまして、たとえばフライパンとか、バンジョーとかも使ってます。とあるシーンではトルコの伝統的な楽器を使いたかったんだが、僕はテネシー州にいるので、仕方なく中古のバンジョーで代用したんです(笑)。そのバンジョーにチェロの弦を張ってみたら、ユニークな音響効果を作り出せたんですよ。この『Avowed』の世界であるアウラに住んでいる人が普段聞いているような音楽を生み出せたと自負しています。
――そのほか、何かユニークな楽器やSEは使用されていますか?
ヴィーナス:たくさんあるのですが、中盤で非常に暗い場面がありまして、その雰囲気を出すためにいろいろな楽器をとにかく遅く遅く再生しました。人間の耳では聞き取れないくらい低い音にしてみたりもしました。それによってある種の質感を表現できたかもしれません。
他には、生のバイオリンをブレンドしたものもあり、実際の世界では聴けないようなものばかりになっているはずです。他の場面では、バイオリンを何度も何度も録音し直したんですが、カセットレコーダーで録音したものをまた別の音と組み合わせたりもして、アナログかつ不思議な音楽になりました。

よりゲームが進んで、いよいよ大きな謎が解かれるという場面においては、ワイングラスを指でなぞって曲を作りました。また、UVIという大量のミュージックライブラリを保有しているウェブサイトがあるんですが、そのなかにガラスのオーケストラという曲があります。ガラスを使っていろいろな音を再生しているんですよ。ガラスのハープとかガラスの木琴とか……そういうのを組み合わせることで、ユニークな感触の音楽を作ることができました。
Glass Orchestra - 異世界の響き:https://www.uvi.net/jp/orchestral/glass-orchestra.html
――作曲過程で起きた忘れられない出来事はあるでしょうか?
ライアン:シャッタースカープという砂漠のステージの曲を作るのが難しかったですね。砂漠的な音でないといけませんが、ディズニーのアニメみたいにアラビアっぽい典型的なものか、カウボーイが出てくる場面のような音しか思いつかなくて、どちらも我々の求めているものではなかったんです。今までの砂漠のイメージを超えつつ、ファンタジーゲームの砂漠から離れずに作るにはどうしたらいいかについて、長いこと話し合いましたね。
――その砂漠の曲を作るうえでどういう突破口があったのでしょうか?
ヴィーナス:先ほどライアンが言った二種類の音楽を追求してみたんです。ディズニーのほうが我々の世界に近かったかもしれません。砂丘が連なっているイメージですね。しかし、ぴったりではなかった……カウボーイのほうは、ごつごつした岩のあいだを進むイメージでしょう。こっちはだいぶ違います。
つまり、楽曲の背景が我々のビジュアルにどこまで近づくかというのが問題でした。そのシャッタースカープには村もあるんですが、これがなかなか不安定な感じがする村なんです。その感じを音で表しつつ、ユニークでなければならない……私がやってきた実験的な音楽が活かされたと感じた瞬間です。ときには沈黙まで使って、その感触を再現しました。

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