ドンキーとディディーの大冒険が“三度目”の復活! 傑作2Dプラットフォーマー『ドンキーコング リターンズ HD』レビュー

あの世界一有名なコングたちが帰ってきた。『ドンキーコングリターンズ』は、レア社が生み出した「スーパードンキーコング」シリーズの後継作であり、多くのアクションゲームユーザーに親しまれてきた傑作だ。
2013年にニンテンドー3DS向けソフト『ドンキーコング リターンズ3D』として、2015年にWii Uのダウンロード版として、そして今回2025年にNintendo Switch向けに『ドンキーコング リターンズ HD』として発売されたことで、都合三度もの復活を果たしているタイトルだ。
それだけ何度も移植されているだけあって、アクションの面白さは折り紙付きである一方、なぜか長くなってしまったロードや、リトライ性の悪いタイムアタックなど、評価できないポイントも多い。それではひとつずつチェックしていこう。

またしてもバナナが盗まれた!? 今度の敵は催眠を使う
本作のシナリオはいつものシリーズ作とは一風変わっている。

物語の舞台は、ドンキーコングとディディーコングが暮らすジャングル。そこにティキ族という浮遊する仮面の集団が現れ、ドンキーコングの大切なバナナを盗んでしまう。このティキ族は音楽を使ってアニマルフレンドたちを洗脳する力を持ち、ジャングル中の仲間たちが操られてしまったのだ。
目をグルグルにしてドンキーの集めたバナナをせっせと運ぶアニマルフレンドたち。ついでにドンキーも洗脳しようとするが(あまりにおバカすぎたためか)ドンキーにはまるで洗脳が通じない。ドンキーはとりあえず目の前にいるティキ族をブッ飛ばしてから、ディディーとともに奪われたバナナを取り戻す旅に出るのだった。

本作のオリジナル版を手掛けたのは「メトロイドプライム」シリーズなどを開発してきた任天堂の子会社であるレトロスタジオ。1999年の『ドンキーコング64』(レア社開発)シリーズ以来の「スーパードンキーコング」シリーズの正統続編なのだが、その重責にはしっかりと応えられている。
ジャングルや遺跡といったおなじみのステージから、ロボットを生み出す工場まで、さまざまなロケーションが楽しめる。各エリアには特有の仕掛けが詰まっており、ツタをよじ登る定番のステージもあれば、スイッチを起動させて足場を入れ替えるところもあり、飽きさせない工夫が満載だ。

基本的にはドンキーコングをメインで操作する。ローリングジャンプや地面を叩くといったいつものアクションに加え、本作では息を吹きかけるという動きも可能になった。ドンキーらしからぬコミカルな動きが可愛らしい。
また、道中でDKバレルを壊すと相棒のディディーが助けに来てくれる。彼は過去作と違って、ドンキーの肩に捕まって身代わりとして追加ライフをくれる形だが、彼がいる間は空中で少しホバリングすることができる。『ドンキーコング64』にあったフィーチャーが輸入された形だ。

なお、本作では水に落ちるとすべてミスになる。つまり、水中ステージが一切ない! なんて素晴らしいんだ!
過去作同様、スピード感と重量感を同時に覚える心地の良いアクションが延々と続くので、病みつきになって遊んでしまうタイトルだ。ディディーがいる状態では空中でも多少無茶が効くが、ドンキーひとりになると途端にシビアなジャンプを要求されるなど、ゲームシステム側で緩急を付けているのも上手い。

高難易度ステージもいたずらに難しくしているわけではなく、ひとつのギミックをいかに面白く見せるかという点に絞ってしっかりと丁寧に作られているのがよくわかる。何度もチャレンジしてなんとかクリアしようという気にさせるのがとても素敵だ。
基本となるゲームデザインはコアなゲーマーを満足させる作りである一方で、アクションゲーム初心者はクランキーコングのお店でアイテムを買い込めばいいし、それでも難しい場合はおたすけピッグにお手本プレイを見せてもらうこともできる。幅広い層に楽しんでもらえるような配慮がなされた、まさしく教科書的なアクションゲームと言っていいだろう。

しかしながら、気になる点も少なくなかった。まずはもともとのゲームの仕様から言及していきたい。
まずはタイムアタックの仕様である。本作は一度クリアしたステージのタイムアタックに挑戦することができるのだが、この作りが少しアバウトに思えた。

基本的なステージを駆け抜ける気持ち良さはあるのだが、トロッコやロケットといった乗り物に乗って進む強制スクロールステージは、普通にクリアするのとほぼ同じ遊びになるので、もう一度遊ぶ意味合いを感じられなかった。
また、タイムアタック中にミスをすると直近のチェックポイントに戻されるのだが、どうせタイムは維持されたままなので、結局のところ自分でステージの初めからやり直す羽目になる。続編である『ドンキーコング トロピカルフリーズ』では強制的に初めからになるので、その仕様に統一すればいいのでは? と思ってしまった。

次に、ボス戦だ。「スーパードンキーコング」シリーズではボスに攻撃を三回当てれば倒せるケースがほとんどだったが、今作からはボスが異様に硬くなっており、何度も何度も攻撃しなければ倒れてくれない。
ちょっと色が変わったり、攻撃パターンが変化したりするだけで、目覚ましくドラマチックになるわけでもないバトルがさらにダラダラと長くなった印象があり、ボス戦は退屈に感じてしまった。

他にも、登場するアニマルフレンドがランビだけだったり、何度も同じボーナスステージを遊ばされたりという点は残念ではあったが、スーパーファミコンで遊んだときの体験をより洗練させたデザインは、現代のゲーマーにこそ楽しんでもらいたいと思えた。「スパドン」に育てられた世代の人にこそ、再訪してほしいゲームである。
……ただ、傑作の復活という偉業を、手放しに褒められない点がまだあるのが非常に残念だ。それは、今回の移植に際して起きた問題である。

最大の問題はロード時間である。三度目の移植であり、Nintendo Switchという最も高性能なハードでありながら、なんと過去のシリーズ作よりもロードが長くなっている。
データ容量も『ドンキーコング トロピカルフリーズ』よりも大きくなっているので、これは単に移植を担当したFOREVER ENTERTAINMENTによる最適化が上手くいっていないのだろう。
しかし、ロードの長さを加味しても、オリジナルの魅力は損なわれていないと感じた。2Dプラットフォーマーの王者の風格を、ぜひとも堪能していただきたい。

『ドンキーコング ジャングルビート』は、任天堂の“ある精鋭開発チーム”をデビューさせた記念碑的作品だ
12月16日をもって『ドンキーコング ジャングルビート』(以下、ジャングルビート)の発売から20年が経った。ニンテンドーゲームキ…