発売から3日で売上345万本突破 シリーズの伝統を守る『スプラトゥーン3』の“さらにイカした面白さ”を考察

『スプラトゥーン3』の“さらにイカした面白さ”

 9月9日、任天堂はアクションシューティングゲーム『スプラトゥーン3』(Nintendo Switch)を発売した。

スプラトゥーン3 紹介映像

 同作は2015年5月に誕生したWii U用ソフト『スプラトゥーン』に端を発するシリーズ第三作目。プレイヤーは地方都市「バンカラ街」に生きる住人となり、ライバルたちと互いの勢力圏をかけた戦い(ナワバリバトル)に挑む。基本システムはTPS(サードパーソンシューター)をベースとしており、4人制チームでフィールド上の陣地確保(ブキを使って地面を塗る)を目指す。

 加えて、プレイヤーは2種類の形態(ヒト/イカ)を使い分けることが可能。「インクが塗られた地面をイカ形態で潜航する」等のアクションにより、試合中は陣地の取り合い+アグレッシブな撃ち合いが頻繁に発生し、立体的なフィールド地形も相まって展開が目まぐるしく入れ替わる。また「地面を塗って陣地を取るだけでもチームに貢献できる」という仕組みを採用し、シューター作品に触れてこなかったカジュアル層からも注目を集めた。

 同シリーズは第一作目の時点でソフト売上495万本(世界累計)を記録したほか、Nintendo Switchのローンチ間もない頃にリリースされた続編『スプラトゥーン2』もソフト売上1330万本(世界累計)を達成。「スーパーマリオ」や「どうぶつの森」などと並び、任天堂を代表する人気作品として多大な支持を得ている。

これからはじめるスプラトゥーン

 そして『スプラトゥーン3』もまた、現在進行系でソフト売上&市場からの注目度を伸ばし続けている。任天堂の発表によると、本作は発売から3日間で国内売上345万本に上ったという。この記録は「スプラトゥーン」シリーズにおいて初とのこと。発売後も同様の傾向が続けば出荷本数はさらに増えることが予想され、一人のプレイヤーとしても本作の人気ぶりをリアルタイムで体感している次第だ。

 では、『スプラトゥーン3』は前作から一体どのような進化を遂げ、シリーズファンや新規プレイヤーにどのように受け入れられているのか。本稿では『スプラトゥーン2』からの変更点を踏まえつつ、同作のポテンシャルについて考えてみたい。

『スプラトゥーン3』は革命ではなく進化 シリーズの伝統を踏襲

 まずは『スプラトゥーン3』に対するメディア周りの評価を見てみよう。レビュー集積サイト・Metacriticの該当ページを見ると、メタスコアが84、ユーザースコアは8.6となっている(9月12日時点)。リリースから1週間に満たない期間でのデータだが、前作『スプラトゥーン2』からメタスコア&ユーザースコア共に若干の上昇傾向が見られる。

・『スプラトゥーン3』は革命というより進化というべきものだが、シリーズ史上最高の作品に仕上がっている(100/Vooks)
・任天堂は従来の方式を次のレベルに引き上げる方法を完璧に心得ており、『スプラトゥーン3』はその明確な例と言える(90/Areajugones)
・『スプラトゥーン3』は、任天堂のポートフォリオの中で最も新鮮で楽しいフランチャイズの1つであることを確認させてくれた(85/SpazioGames)

 上記はMetacriticから抜粋(日本語へ翻訳)した各メディアのメタスコア&レビューだが、ここで注目してもらいたいのは、”『スプラトゥーン3』が革命というより進化というべきもの”という部分。もちろん解釈は個々人によって様々だが、同作に限って話を進めると、「幾つかの新要素はあるものの、シリーズが築き上げてきた伝統は損なわれていない」という評価に繋がると思われる。また、「新要素の追加や既存システム周りの調整を経て、全体的な遊びやすさが改善された」という見方もできるだろう。

 下記は『スプラトゥーン3』にて追加された新要素の一例だが、上述のレビュー引用にある通り、ゲームシステムそのものを根底から引っくりかえすような革命的試みははっきり言って見られない。過去作に無かったブキが加わったり、新規アクションの実装で戦い方のバリエーション(緊急回避など)が増えたとしても、大枠の部分は変わらないのだ。

 変わらないことに対する意見は往々にして異なるが、少なくとも従来のシリーズファンはこれまで同様に「スプラトゥーン」特有のゲーム性に浸ることができ、一方の新規ユーザー層はブラッシュアップされた『スプラトゥーン3』から同シリーズの魅力を味わうことができる。そのほか、「試合に負けた場合に勝利チームの演出を見ないで済む」といった点も、何気ないように見えてプレイヤーのメンタルケアに関わる重要な変更だと言えるだろう。

●『スプラトゥーン3』で追加された新要素(一部)
・新規ステージ(ユノハナ大渓谷など)
・新規ブキ(ストリンガーなど)
・新規アクション(イカロール/イカスポーン/イカノボリ)
・ミニゲーム「ナワバトラー」実装
・リプレイデータを再生する「メモリープレイヤー」実装

 「スプラトゥーン」シリーズと言えば、その競技性の高さやコミュニティの盛り上がりを受け、全国規模のeスポーツイベント『全国スプラトゥーン甲子園』が過去5回にわたって開催された。また、日本野球機構(NPB)が手掛ける12球団参加の競技プロジェクト『NPB eスポーツシリーズ スプラトゥーン2』も行われたりと、シューター作品というゲーム性とマッチしたeスポーツ的側面に可能性が見出されてきた。

 両イベントはどちらも新型コロナウイルスによる感染拡大の影響を考慮して延期されたが、今後の状況を鑑みて、無期限延期の決定が取り消される可能性も全くのゼロとは言い切れない。5年ぶりの新作となった『スプラトゥーン3』の登場を契機とし、情勢に見合った運営スタイルで華やかなイベントがカムバックすることを期待しつつ、同作の行く末を継続的に見守りたい。

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