『ワイルド・スピード ICE BREAK』はシリーズ屈指のやらかし作? それでも次へ進めた理由

メガヒットになった『SKY MISSION』に続く本作『ワイルド・スピード ICE BREAK』、ハリウッド超大作の宿命、続く作品では前作よりものすごいことをしなければならない。そんなわけでキャスト陣ではシャーリーズ・セロンが加わった。さらにアクション面でも「車で『ワールドウォーZ』(2013年)のゾンビみたいなことをやったら面白いんじゃないかな?」「戦車や戦闘機と戦ったら、次は潜水艦っしょ」といった軽いノリで決めたとしか思えない、狂気の大規模アクションが組み立てられていく。一方、裏側ではロック様とヴィン・ディーゼルがマジ喧嘩を起こす修羅場が発生。ヴィンが撮影で不真面目な態度を取ったことに、ロック様がキレたのが発端だというが、真相は分からない。ちなみにステイサムは特に問題なく2人と付き合えたらしいが……何か分かる気がする。ステイサムのことだから、きっとスタローンに電話で相談して、恐らく具体的には役に立たないが気持ちは伝わる熱い言葉をもらったり、ガイ・リッチーと飲んで妙に堅実な助言をもらったりしていたのだろう。ともかく、すったもんだの末に本作『ICE BREAK』は完成する。
最初に書いた通り、この映画は完全にやらかした。ヴィンとロック様の共演シーンが不自然に少なく、そのせいでプロットは混乱している。シャーリーズ・セロンも「ハイテクテロリスト」という小学生レベルの肩書きで登場したわりに、特に何かした感がない。しかし車ゾンビ軍団や、潜水艦vs車、この世でロック様しか説得力を持って演じられないアクションの数々など、正気とは思えないビジュアルはやはりインパクトがある。そして本当にビックリするほどステイサムはステイサムだ。本作ではワイルドでセクシーでキュートに大活躍。この後にロック様とステイサムで外伝『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)が作られたのも納得である。

やらかした『ICE BREAK』だが、しかし間違いなく次に続く1本だった。公開後もヴィンとロック様がSNSで煽り合う泥仕合は続いたが、この反省を活かして、続く『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(2021年)は『MEGA MAX』を手がけたジャスティン・リン監督が復帰、手堅くウェットな味わいの映画に仕上げた。コロナ禍で何度も公開が延期されたにも関わらず大ヒットを記録する。キャラの交通整理も行われ、ちょっと冷静になったかと思われたが……続く『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)は再びやらかす。撮影が難航し、気付けば映画史でも上から数えた方が早い制作費がかかってしまった。しかし、巨大鉄球とローマの街で追いかけっこをするなど(書いていても意味が分からないと思いますが、本当に鉄球と追いかけっこをするんです)、信じられないほど面白い場面も多々あり、掟破りすぎるエンディングも相まって、世界中で大ヒット。突っ込んだ予算が凄かったので商売的には問題があったそうだが……現在、11作目にしてシリーズ完結作の撮影が始まった。原点回帰が掲げられていることや、ヴィンが脚本を読んで「涙が止まらない」とコメントするなど、『ファイヤーブースト』のやらかしを踏まえた映画になっているらしい。サッカー選手のロナウドが出ると言う噂を聞いたような気もするけれど。
ノリで破壊と再生を繰り返し、四半世紀の大爆走……。失敗と成功の終わりなき独り相撲は、とてもハリウッド超大作とは思えない。3桁億円がノリと勢いで増えたり消えたりしているのだ。正気の沙汰ではないが、だからこそ、たまらない人間味もある。それに元気も出てくる。3桁億円のプロジェクトすら、そんな感じで何とかなっているのだ。私の人生だってどうなるか分からなくて当然だろう。でも、きっと上手いこと何とかなるさ。
このシリーズは果たしてどこに着地するのか? もう人生の半分以上を並走している私にも分からない。しかし見届けようと誓っている。そんな狂ったサーガの重要な一里塚として、『ワイルド・スピード ICE BREAK』は味わい深いものがあるのは確かだ。
■放送情報
『ワイルド・スピード ICE BREAK』
フジテレビ系『土曜プレミアム』にて、8月29日(土)21:00〜23:55放送
出演:ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、ナタリー・エマニュエル、エルサ・パタキー、カート・ラッセル、シャーリーズ・セロン、スコット・イーストウッド、ルーク・エヴァンス、ヘレン・ミレン
監督:F・ゲイリー・グレイ
脚本・製作総指揮:クリス・モーガン
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