加藤よしきの「2023年 年間ベスト映画TOP10」 “楽しい”という気持ちを大切に

加藤よしきの「2023年映画ベスト10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2023年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、映画の場合は、2023年に日本で公開された(Netflixオリジナルなど配信映画含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第4回の選者は、映画ライターの加藤よしき。(編集部)

1. 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』
2. 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
3. 『ゴジラ-1.0』
4. 『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』
5. 『イコライザー THE FINAL』
6. 『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
7. 『バービー』
8. 『M3GAN/ミーガン』
9. 『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』
10. 『MEG ザ・モンスターズ2』

 2023年。コロナ禍の生活に良くも悪くも慣れてきたにもかかわらず、私事で恐縮ですが持ち前の鬱病が本格的に再発&悪化して気まずい1年になりました。過去にいくつかの媒体で書いたのですが、10年くらい前に罹ってからずっと治療中で、ここ数年は落ち着いていたのですが……見積もりが甘かった。寝食などの日常生活に支障はなく、他人と普通に話せるだけマシではありますが。

 そんなわけで2023年は楽しいこともありつつ、7:3で辛いことの方が多かったです。仕事が基本的に上手く片付かず、その関係で休みがなくなり、たまの休日も心の中のISONO波平が「バカモン、仕事もロクにできんのに遊んどる場合か」と私を責め、劇場に映画を観に行くことも減りました(思えば波平は戦争帰り。きっと彼はPTSDに苦しんでいたのでしょう)。そんなわけで今年はほとんど映画を観れておりませんし、前向きに楽しもうという気持ちが欠如していたので「あの話題作もねぇ、この名作もねぇ」といった、かなり消極的なランキングになっています。どうかご勘弁ください。

 そんな中でも今年の10位は、ぶっちぎりで『MEG ザ・モンスターズ2』です。夏休みにおじいちゃんの家のタライで行水しているような、なつかしさと心地よさがたまらない映画でした。「何があろうと、誰にどう言われようと、これだけは2023年の映画を振り返るときに語りたい!」そんな映画を私は10位映画と呼びます。本作はまさにそういう映画です。夏の終わりに忽然と10位映画として出現し、そのまま見事に最後まで逃げ切りました。おめでとうございます。

 9位は阪元裕吾監督の大ヒットシリーズ第2弾。正統進化という言葉がピッタリな、すべてがパワーアップした1本でした。8位は殺人AI人形の魅力、7位は新喜劇マインドの笑いにやられましたね。そしてシリーズ完結編(?)となった6位。正直、1作目以降は複雑化する世界観に少し心が離れていたのですが、今回はずっと戦いっぱなしの「キアヌのお疲れ様超大作」として楽しめました。あれだけ頑張った人は、褒めねばなりません。酷使されるキアヌが疲弊しきった山王戦の三井に見える瞬間があり、階段落ちのシーンは『蒲田行進曲』(1982年)を超えたと思っています。5位も同じくシリーズ完結編で、こちらはデンゼル・ワシントンの渋さを存分に味わえました。観ているあいだのワクワク感は、正直なところ今年で一番だったかもしれません。続く4位は「童心に帰った」という表現がぴったりの、笑いあり涙ありのファンタジー冒険活劇。このノリで続編も作ってほしいものです。

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