『ワイルド・スピード ICE BREAK』はシリーズ屈指のやらかし作? それでも次へ進めた理由

終わってみれば、あれもあれで必要だった……そんな“やらかし”は誰もが一つは経験するもの。今でも忘れられないが、私は小学生のときに夏休みの宿題を1日で終わらせようとしたら、脱水症状を起こして死にかけた。『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017年)は完全にそれである。四半世紀も続いている『ワイルド・スピード』シリーズだが、本作は容量がパンパンになって爆発したポイントである。やらかした映画だが、しかし今となっては意味があったとも思う。今回、地上波放送が決まったので、同シリーズの歴史と魅力についても語っていきたい。

そもそも『ワイルド・スピード』シリーズ(2001年~)はどういうシリーズなのか? ひとことで表現するなら、破壊と再生の終わりなき反復横跳びである。トライ&エラーの歴史と言えば「プロジェクトX」的な気配が漂うが、そんな行儀のよいものではない。ノリで何とかなるだろうと思ったら何とかならなかったという、非常にザックリしたものだ。この見積もりの一貫した甘さこそ、シリーズの伝統だと言っても過言ではない。
シリーズの原点『ワイルド・スピード』(2001年)は、アメリカの暴走族を描いた青春友情アクションで、これが思ったより世界中で売れた(この「思ったより売れた」も『ワイスピ』シリーズの肝になる思想性である)。勢いづいて『ワイルド・スピードX2』(2003年)の制作が決定するが、主演のヴィン・ディーゼルがまさかの続投ならず。やらかした感が出てきて勢いに陰りが見え、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006年)を発表するが、こちらもアメリカでの興行収入は伸び悩んだ。しかしアメリカ以外で思ったより売り上げがよく、ヴィンのカメオ出演も好評を集める(クリストファー・ノーランがけっこう好きだそうです)。それならばとオリジナルキャストを集結して同窓会的に作られた『ワイルド・スピード MAX』(2009年)が、これまた思ったより大ヒット。だったらもう全員集めようというノリで、これまでのシリーズの登場人物を丸ごと集め、さらにロック様ことドウェイン・ジョンソンまで投入した『ワイルド・スピード MEGA MAX』(2011年)を作ったら、奇跡的な傑作に仕上がった。

『MEGA MAX』は間違いなく金字塔であり、このシリーズは一つの型を完成させた。すなわち、ものすごいマッスルな人たちが、ものすごく景気のイイ音楽をBGMに、ものすごい車をブッ飛ばして、悪党を物凄く痛快に退治したあと、バーベキューとビールで乾杯をする。そんなシリーズの基本形を完成させたのだ。米と魚で育つ私たち日本人からは決して出てこない、まさにアメリカな作劇術である。
そんな『MEGA MAX』は全世界のアメリカ好きの心を打ち、想像を超えるメガヒット作になる。続くシリーズ屈指の傑作『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013年)、主演俳優の事故死という不幸を乗りこえて制作された感動作『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)もメガヒット。まさにドル箱シリーズと化したが、想像を超える快進撃にシリーズはパンパンになっていく。気付けばロック様とジェイソン・ステイサムがレギュラーに加わった。映画の規模も1作目ではトラック1台を必死こいて襲っていたのに、ブラジルの街を破壊したり、戦車と戦ったり、無人戦闘機と市街戦になったり、こちらもパンパンになっていた。
まさに破綻寸前、表面張力ギリギリ。そして……“その時”がやってくる。



















