『風、薫る』が映し出す看護婦制度の“光と影” 理不尽な現実を浮き彫りにする衝撃展開に

『風、薫る』胸を締めつける衝撃展開に

 真っ白な制服はまぶしい。NHK連続テレビ小説『風、薫る』第13週「白日の夢」(演出:橋本万葉)では養成学校を卒業したりん(見上愛)、直美(上坂樹里)、多江(生田絵梨花)、トメ(原嶋凛)の4人が看護婦として帝都医科大学附属病院で働き始めた。

 りんたちは「看護婦取締」となり看病婦の上に立ち、帝都医大の看護科第一期生の教育も担当する。社会に出たばかりで「取締」とはかなりハードな任務。だがはじめての月給は予想に反して10円だった。捨松(多部未華子)が外国の看護婦の月給は30円と言っていたが、さすがに外国のようにはいかないとはいえ、三分の一とは。落胆した多江は出世してもっと高給取りになると自分を鼓舞する。

 10円とはいえ、当時の女性の手にできる給金のなかではいいほうだ。とりわけ当時は女性にできる職業に限りがあったから、贅沢は言えない。女性の職業としては教員が代表的で、ほかに女中、看病婦、遊女など。ちなみに小学校教員の初任給は明治19年で5円。遊女の揚代は明治14年で1円(吉原遊郭での最高級の大店での泊まり最高料金。ここからどれくらいが遊女の収入になるかが不明)だった(朝日新聞社刊『値段史年表:明治・大正・昭和』より)。また前作の連続テレビ小説『ばけばけ』では旅館奉公は90銭、小学校教師は4円、トキ(髙石あかり)のヘブン宅の女中奉公は20円だった。少ない女性のできる仕事に看護婦という選択肢が増えただけいいほうだろう。

 教員も女中も看病婦も遊女も生きていくための仕事にすぎず、その仕事に憧れるようなことは稀だ。りんと直美が看護婦を目指した理由もお金のためで、看護婦に意義を感じて目指した多江やゆき(中井友望)などが異例だったのだ。

 ところが新入生たちは違う。皆、看護婦にやりがいを感じて目指している者ばかり。はっきりは言及されていないが、比較的裕福な家庭のお嬢さんたちが多そう。事前に勉強もしっかりしてきて、英語も堪能だ。そんな新入生たちをちゃんと導いていけるのか、直美は不安を感じる。実際、新入生たちはりんたちがを信頼に足るのか疑問の様子だ。

 そんなとき、お金のために看病婦をやっていたツヤ(東野絢香)が看護婦を目指すことになった。喜代(菊池亜希子)の勤務態度にあこがれてのことだ。喜代が患者の赤ん坊の世話をするなど業務ではないことにも配慮している様子をツヤはいつしか尊敬するようになっていたのだ。その喜代は看護婦ではなく伝道師を選び、すでに病院を出ていたが、ツヤは看病婦の仕事をしながら看護婦の勉強をしはじめる。

 あいにく病院では不穏な変革が行われていた。生活費を稼ぐために働いている看病婦たちを徐々に減らし、やりがいを求めて入ってきた若い看護婦たちを雇用していく方針を院長(筒井道隆)は考えていた。

 そこで看護婦の講義が受けられるのは29歳以下と規定し、フユ(猫背椿)たち年配の看病婦にはチャンスが与えられない。フユはほかの仕事を探さないといけないときが来ているとうすうす感じはじめていた。

 そんなとき、ツヤは仕事と勉強の両立による疲労からミスをして解雇されてしまう。

「だって一ノ瀬さんたちより長くここで働いてきたんですから」

 ツヤは辞めても看護婦の勉強を続けると気丈ではあるが、長く働いてきたのに、1回のミスで切り捨てられてしまうとは。患者の命に関わる重大なこととはいえ切ない。

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