『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』が思い出させてくれる“いつかの夏休み”

『スパイダーマン:BND』の“夏休み感”

 今から20年前……まだ少年だった頃、私と夏休みに、それも何年かぶりに会っていた親戚のおじさんたちは、こんな気分だったのかしら? 『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』(2026年)は超王道のヒーロー映画であり、恐らく40歳以上の観客にとっては、いつかの夏休みを思い出させる作品である。

 ピーター・パーカー(トム・ホランド)は、スパイダーマンとしてニューヨークの平和を守っている。しかし、いろいろあったすえに親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)、そして最愛のガールフレンドMJ(ゼンデイヤ)に存在を忘れられてしまった。ヒーローとしては順調にキャリアを積んでいるが、心は孤独に苛まれ、未知なる敵は現れて、自分の体の異常まで表れ始める。かくしてスパイダーマンはガタガタの人生に悩みつつ、かつてない危機に立ち向かうのであった。

 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)でスパイダーマンが初登場してから、気付けば10年が経つ。当時のトムホさんはぶっちぎりで若く、劇中でも先輩ヒーローらにかわいがってもらう善き後輩的なポジションだった。この若さこそがトムホさん版スパイダーマンの最初の魅力だったと思う。その後の『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)に始まる単独主演作では高校生活が描かれ、スーパーヒーロー映画でありながら、どこかティーン映画的な味わいがあった。

 そんなトムホさんも、気が付けば30歳である。共演のゼンデイヤさんとも結婚した。もう若者ではないし、後輩でもない。いや、むしろ……ここから少しネタバレの話になる。まだ公開されて間もないし、そういうのが気になる方は読むのを止めてもらいたい。

 というわけで、ネタバレ込みの話である。

 本作のメインヴィランであるジーン・グレイ(セイディー・シンク)は、なんとトムホさんの年下である。この設定には作り手たちの覚悟を感じた。「今までと大きく異なる映画を作るぞ」と。

 これまでの同シリーズでは、常にトムホさんの敵は大人だった。それもマイケル・キートン、ジェイク・ギレンホール、ウィレム・デフォーといった、よりにもよってなメンツである。とはいえ彼らは策謀や裏工作を使いながらも、直接的な暴力上等のスタイルで襲ってきた。直接的な暴力による対決が成立したのだ。

 その点、今回のジーンはまったく異なる。彼女はテレパシーで人間を操る特殊能力者だが、スパイダーマンと直で戦闘を行うことはない。民間人やMJの体を乗っ取って脅迫し、自分以外の他人を操ってスパイダーマンにけしかける。さらに後半では秘密が明らかになり、彼女がより大きな悪の被害者だと分かる。つまり、能力的にスパイダーマンと戦いが成立するタイプではなく(成立というより、お互いの能力の相性が悪いというか。エンターテインメントのバトルシーンに落とし込むのが難しい)、そもそも戦って解決する問題でもなくなるのだ。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる