梅原裕一郎、“低音ボイス”の試行錯誤 声優業は「ここまで来たら引き返せない」

梅原裕一郎、“低音ボイス”の試行錯誤

 シリーズ累計発行部数750万部を超える『鬼の花嫁』シリーズがTVアニメ化を果たした。平凡な高校生・東雲柚子が、“あやかし”の頂点・鬼である鬼龍院玲夜と出会ったことから運命が大きく動き出す、“あやかし×和風シンデレラストーリー”だ。

 梅原裕一郎は本作で鬼龍院玲夜を演じている。梅原の特徴的な低音ボイスを活かし玲夜を演じるなかで、柚子役の早見沙織との掛け合いで生まれたリアルな会話、演技に求める“自由”についての思いを明かした。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「自分なりの呼吸のタイミングで演じられる」

——今回、アフレコ時点で映像はどの程度完成していたのでしょうか?

梅原裕一郎(以下、梅原):序盤はいわゆる線画といわれる、輪郭だけが描かれた状態で、あとは色をつけるだけくらいの状態でしたかね。もちろんスケジュール的なこともあって、後半は絵コンテ撮で進むこともありました。

——声優さんは完成前の映像を観ながらあれだけの演技ができるのが本当にすごいなと、かねがね思っているのですが……。

梅原:わりと完成前の映像のほうが演じやすいこともあって。もちろん完成した映像では細かい表情を見られたりして、心情を組み取りやすい部分はあるんですが、ざっくりとした画で細かい尺やセリフの間がラフに提示されているほうが、自分なりの呼吸のタイミングで演じられたり、尺が多少短くなったり長くなったりしても、あまりに極端にはみ出していなければ採用してもらえる演技も多かったりします。そういう意味では完全に完成されているものより役者の自由度は高いというやりやすさはあります。

——『鬼の花嫁』では鬼のキャラクターを演じることになりましたが、鬼ならではのニュアンスや間を意識することはありましたか?

梅原:「鬼のあやかしだからこうしよう」という意識はそこまでなかったのですが、玲夜は単純に人間を超越した力を持っている、圧倒的に人間よりも上位の存在、特にあやかしの中でも強い存在であるということは意識していました。どっしりと地に足がついた、貫禄のある喋り方といいますか、特に次期当主として振る舞っているときはそういう“強者感”を出せたらいいなと。

——今作は梅原さんの素敵な低い声の響きが、特に発揮されている作品だと思いました。

梅原:低さにも何種類かあって、例えばもっとガタイのいいキャラクターだとしたら、より“固めの声”にしようかなと考えるんです。ただ玲夜はどちらかというと線は細いほうというか、あまりゴリゴリしているタイプではないので、低いけれども、どこかにしなやかさが残ればいいなと考えながらキャラ作りをしていました。

——早見沙織さん演じる柚子とは作中で頻繁に関わることになりますが、早見さんとの掛け合いで印象に残っていることはありますか?

梅原:さきほどお話ししたように、画が完全に完成されていない状態では、逆にいえば演技の自由度は高いんです。声優が話し始めるタイミングというのはあらかじめ決まっていて、「ボールド」という合図が表示されるんですけど、例えば僕のセリフが少し早めに終わってしまったら、それを待たずに早見さんが会話として成り立つように出てくださったりとか、逆もしかりで早見さんのセリフが仮に早く終わってしまったら僕も早めに話し始めて会話として成り立つように掛け合いをしたり。こういうときは本当にマイクの前に立ってから言葉にはしないですけれど、その場その場で意思疎通を取りながら演技をしていきます。テストが終わった後に「あそこちょっとセリフこぼれちゃってすみません」とか「僕のセリフここの尺が余っているので早見さんも早く出て、早見さんの長いセリフに当てていいですよ」と相談するくらいのことはありますが。

——そういうリアルな会話の演技は咄嗟の判断で生まれるものなんですね。

梅原:結局は掛け合いなので、「会話」として聞いて気持ちよくなるように、それを重視して演じていました。日常的に会話をしていて、ボールドを待つ、みたいなことは普段あまりありませんよね。最近はボールドは意識しつつ、あまりそれだけに固執せず、キャラクターの会話が自然に流れることを大事に演じるようになりました。

——梅原さんはどれくらいの経験を経てそういう境地に辿り着いたのでしょうか?

梅原:どうなんでしょう……。「ボールドを気にしないでやってみたら?」というスタンスの音響監督さんもいらっしゃって、そういう方とお仕事をしていく中で、それが自然であれば作品にとっても良いのではないだろうか、ということを肌で実感していって、徐々に優先することを作品ごとに、都度考えるようになったかもしれません。

——『鬼の花嫁』の現場で特に印象に残っているディレクションはありましたか?

梅原:やはり玲夜が普段はかなりクールな人物で、次期当主という立場もあって他人にはあまり親しげに話さない人物なのですが、唯一柚子に対しては優しい言葉をかけたり、柔らかい表情を見せたりしていきます。その柚子に対する柔らかさをどこまで見せるかという微調整については、音響監督の若林(和弘)さんに細かくディレクションしていただきました。僕は最初は玲夜のクールさを生かしたまま優しい言葉をかけなきゃいけないなと思っていたので、どこまで思いを込めていいのかの調整が難しかったんですが、序盤で「このセリフはもっと気持ちを込めていい」とかセリフ一つひとつに対して細かくディレクションしていただけた回があったので、それからだんだんと玲夜の感情の振り幅が定まっていきました。最初は玲夜も余裕な感じで柚子と話しているんですが、だんだん玲夜がちゃんと柚子のことを好きになっていくなかで、柚子のことを心配するモノローグであったり、高道と話しているなかで柚子のことを話しているときなどは意識して強く感情を込めていました。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる