『風、薫る』次世代育成が映し出す物語の核 人手不足に向き合う看護教育の現場のリアル

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第13週「白日の夢」からは、梅岡女学校付属看護婦養成所を卒業したりん(見上愛)と直美(上坂樹里)、多江(生田絵梨花)、トメ(原嶋凛)の4人が、帝都医大病院でトレインドナースとして働き始める。
真っ白のナース服に身を包み、晴れて看護婦になったのも束の間、院長の多田(筒井道隆)から言い渡されたのは“看護婦取締”という役割。りんは外科、直美は内科、多江は婦人科、トメは伝染病科とそれぞれ分担して看病婦たちを取りまとめながら、看護婦としても患者と接する。つい先日まで看護婦見習いだった彼女たちが、あっという間に指示を出す立場になるのだから、いかに看護婦の拡充が病院の差し迫った課題であったかがわかる。

さらに、りんたちに課されたもうひとつの重大なミッションが、次世代の看護婦を育成すること。帝都医大病院では付属の看護科が設立され、4人はそれぞれ取締を務める科の先生として、試験に合格した女学生たちに看護を教えることになった。しかも、1年という急ピッチで彼女たちを一人前の看護婦へと育て上げたうえで、自らも看護婦として病院に従事しなければならない。信じられないマルチタスクだ。
それでも、りんや直美はバーンズ先生(エマ・ハワード)から叩き込まれた看護の教えを胸に、生徒たちにも「What is nursing?」と問いかける。自身が学んできたナイチンゲール式の看護を惜しみなく伝授する姿は頼もしい限りだった。

次世代の看護婦を育てるなかで、これまで婦人科で“看病婦”として働いていたツヤ(東野絢香)にスポットを当てながら、知識と実践がどちらも看護婦に欠かせない能力であることを伝える作劇も巧みだった。包帯を巻くのも不慣れなヒデ(池田朱那)と、講義についていくので精一杯のツヤを対立させることもできただろうが、あえてその構図は選ばずに、互いに不足している能力を補い合わせる。そして、彼女たちの目線を揃えたうえで、看護婦という目標に向かって切磋琢磨する関係性を作り出す。まさに看護婦養成所の1期生たちがバーンズの元で経験した学びと団結する過程を、ぎゅっと短期間に詰め込んで描いている。

実際、看護婦という存在が世の中に広まった次のステップで重要になってくるのは、人員の確保と地位の確立。本作の主人公2人のモチーフとなった大関和と鈴木雅も、看護師という職業の確立に大きく貢献した人物であることから、りんと直美も同じ道をたどっていく可能性が高い。「今の看護科の生徒たちは、みんな看護婦になるのが夢だって」と話すりんに対して、直美は「それは困ったね」と呟く。2人とも立派に先生を務められるのか不安がっていたが、看護婦が女性たちの憧れの職業になりつつあることは、長い目で見れば良い兆候であることは間違いない。
本作も早いことに折り返し地点に差し掛かっており、看護婦になったりんと直美がこれから目指す次なる目標も自ずと明らかになるはずだ。現状はバーンズが夢だと語っていた「看護婦が日本のどんな病院にも当たり前にいるようになる」社会が、りんと直美の夢として受け継がれていくような気がしているが、果たして。

看病婦のフユ(猫背椿)から「よろしく頼むよ。先生」と念を押されていたりん。あらためて、第13週はこれまで学ぶ立場だった彼女たちが、教える立場へと役割を変化させたターニングポイントになっている。看護婦の次世代育成が色濃く描かれた今週を経て、物語がどのように展開されていくのか。まだまだ帝都医大病院では波乱が巻き起こりそうな予感がするだけに、りんと直美の次なる選択にも注目したい。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















