髙石あかりが作った新しいヒロイン像 『ばけばけ』が革新的な朝ドラとなっている理由

その自然体でリアルな表現から、髙石はよく憑依型の女優だと評されるが、自身ではそうは思っていないという。 「私は台本を読む時に、いつも自分を消して役の感情の流れで理解するようにしています。芝居でも“一歩引いて役で返す”という意識があります」(※1) 。一方で、トキ役については、憑依というより「素」に近いのかもしれないとも語る。 「(笑う時も)トキの場合はトキという役で返しているけれど、自分でも返している感覚がある。自分の反応でもあるんです。だから役であっても、私が面白いと思ったものをそのまま笑っているし、私が嫌だなと思ったらそのまま嫌な空気を出しているし、出てしまっている」(※1)。
『ばけばけ』は、現代的だと評されることも多い。確かに、明治時代の設定としては、アクションや会話もポップで現代的なものになっている。もちろん製作陣は百も承知のことだろうと思うが、時代考証よりも、日常を生きることの描写に注力しているからなのだろう。時代を感じさせてしまうと、やはり言わされている感が強くなってしまい、今を生きる俳優たちのリアルは薄くなってしまう。素で演じている髙石自身の感覚を、より生かしている脚本なのだろうと想像する。

同じような意味で、物語のスピードが遅いという評価もあるようだが、だんだんとヘブンとの間に恋心が芽生えていく丁寧な描写には感心する。「どうしてこの二人は恋人になったの?」と思ってしまうようなドラマもある中で、『ばけばけ』の二人の恋には説得力がある。初めて怪談をヘブンに聞かせ、ヘブンがその魅力に目覚めるのを見たトキが、帰り道についスキップしてしまう姿には、心の同志を得た喜びと愛おしさが伝わってきた。
ヘブン役のトミー・バストウとの芝居も、息がピッタリだ。髙石は英語はしゃべれないということだが、「通訳の方を通す前に、トミーさんが言っていることが分かるようになってきていて。自分でもなぜかは分からないんですが、トミーさんの考えていることだったり、お芝居の意図だったり、そういうものが分かるようになりました」(※2)という。
『ばけばけ』は、髙石あかり本人と役柄がぴたりとハマった奇跡のドラマと言ってもいいのかもしれない。史実と照らし合わせれば、夫婦になったトキとヘブンは波瀾万丈の日々を過ごすことになる。これから髙石がどんな表情を見せてくれるのか、まだまだ先が楽しみだ。
参照
※1.https://www.news-postseven.com/archives/20251006_2068771.html/2
※2.https://mantan-web.jp/article/20250927dog00m200013000c.html
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















