『シバのおきて』柄本時生&MEGUMIの柴犬声も抜群 “予定調和”にしない物語の誠実さ

『シバのおきて』柄本時生の柴犬声も抜群

 犬の雑誌編集部に集うはみ出し者たちがかわいい柴犬たちに、犬たちとのよりよいかかわり方を教わりながら人生さえも一変させていくヒューマン&ケイナイン(犬)ストーリー、『シバのおきて〜われら犬バカ編集部〜』。スタッフ犬2号・ボムの死という悲劇を経験した編集部は、再び一致団結していく。

 ボムがいなくなって寂しそうな福助とひとみを元気づけようと、石森(飯豊まりえ)は「お友だち犬を作ろう」を提案。人間の子供同様に犬たちにも公園デビューがあり、犬の性格によってはなかなかスムーズに仲間を作ることができないため、悩む飼い主も多いのだということだった。

 ところが取材が進むにつれ、不愛想で人を寄せ付けない相楽(大東駿介)、そして人間関係の難しさからバンド活動を辞めてしまった新藤(篠原悠伸)など、人間こそコミュニケーションに難があると発覚する。一方、石森のフットサル仲間で、彼女にほのかな思いを寄せる上村(水川かたまり)は、「シバの振り見て我が振り直せ」シリーズを立ち上げた清家(片桐はいり)と滑沢先生(松坂慶子)より、“シバに学ぶ恋愛のオキテ”を伝授されることに。果たしてままならぬ人間たちのコミュニケーションは上手くいくのだろうか……?

 大きな喪失を経験した相楽たちだったが、三田(こがけん)は再び柴犬のお尻の激写に情熱を燃やすなど、ボムへの惜別の想いとともにくだらなくもシバ愛に溢れた誌面づくりに邁進する日々が戻ってきた。滑沢先生によると、一般的に柴犬を含め日本犬は頑固で警戒心や独立心が強いとされているため、人間が上手くリードし、犬にストレスを感じさせないバランスを見計らいながら他の犬とのコミュニケーションを図るのが飼い主の役目なのだという。福助とひとみを連れ出してのお友達作りシミュレーションは、番組を観ている飼い主の方々にとってかなり有益な情報にもなっているのではないだろうか。

 また改めて気づいたのが、柴犬たちの声優を務める柄本時生やMEGUMIの声は、福助とひとみの自然な動きや仕草に合わせてアテレコされていることだ。のんびり屋の福助は、見知らぬ犬に対してどうしても及び腰になってしまうところがある。そのときは無理に犬たちを引き合わせてはいけないことが鉄則だそうだが、シミュレーションでもぎこちなくなってしまう福助の行動を尊重して「やっぱり……嫌だ……」というセリフを当て、強制的に他の犬に近づけようとはしない。つまり、製作陣が見せたい福助たちの挙動を元にセリフを書いているのではなく、福助たちがどこか興味なさげにしていたらその通りのセリフになっているのだ。このあたりに、あくまで犬ファーストである撮影現場の姿勢が見て取れる。

 そして『シバONE』メンバーで、精彩を放つ活躍を見せたのが新藤だった。強面ながら手先が器用でファンシーな衣装もお手のもの、しかもシバ愛は相楽たちにも負けず劣らずですっかり編集部に馴染んでいる新藤だが、実はバンドマン時代は仲間と上手く意思の疎通ができず、解散のきっかけを作ってしまったことが負い目になっていた。

 第6回では、ストリートミュージシャンとして活動を続けていた新藤が、あるミュージシャンから声をかけられ、バンドに加入するという展開が描かれる。柴犬たちの友だち作りに触発されたことと、一度失敗してしまったバンドという夢にもう一度挑むためでもあった。しかし結局、ソロのミュージシャンに戻ることを決める。終盤、心を決めたようにして、新藤はギターを片手に聴衆の前に立つ。そこには、福助を連れた相楽もいた。

 新藤は伸びとハリのある歌声(演じる篠原はさすがの美声)で〈一人で悩んで見つけたこの心 そのどれもが何よりも宝さ どう見られたいかより どういたいか〉と、一人とは寂しい“孤独”ではなく誇らしい“自立”であるとを歌い上げた。取材では、柴犬とその飼い主たちの中にも「群れ合わなくても楽しい」という意見があったのも、新藤を励ましたのかもしれない。“仲間っていいね”というメッセージで終わらせてもいいところではあったが、そうした予定調和を取らないところにもこのドラマの好ましさをおぼえた。

 ちなみに、シバに学んだはずの上村のアプローチは、石森にはまったく響かなかった。やはり恋愛術にかんしては、ストレートで積極的だったボムに教えを請うしかないのかもしれない。

■放送情報
ドラマ10『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~放送
出演:大東駿介、飯豊まりえ、片桐はいり、こがけん、篠原悠伸、やす、黒田大輔、水川かたまり、瀧内公美、勝村政信、松坂慶子ほか
声の出演:柄本時生、津田健次郎
原作:片野ゆか 『平成犬バカ編集部』
脚本:徳尾浩司
音楽:YOUR SONG IS GOOD
プロデューサー:内藤愼介(NHK エンタープライズ)
演出:笠浦友愛、木村隆文、加地源一郎、村田有里(NHK エンタープライズ)
制作統括:高橋練(NHK エンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
写真提供=NHK

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる