『あんぱん』「たっすいがやき、嵩……」 “のぶ”今田美桜が初めて気づいた感情

のぶ(今田美桜)の東京での新生活が始まった。場所が変わったとはいえ、戦争孤児たちから話を聞き、速記で書き留めるのぶの姿に変わりはない。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第83話では、のぶが東京で見ているものとのぶがいない高知で過ごす嵩(北村匠海)の様子が交互に描かれた。

戦後から数年。国は戦災孤児に対する保護方針を出したが、内容は親戚など個人の家庭での保護が第一というもの。食べ物もままならず、実の子供や家族の失った悲しみからまだ立ち直れていない一般家庭に、孤児になっている親戚の面倒を見ろというのはいささか強引だ。世良則雄(木原勝利)が言う通り、国が起こした被害の責任を個人に丸投げしている状態といえる。子どもたちがのぶに話したとおり、親戚の家であっても、施設であっても、劣悪な環境に耐えきれずに逃げ出し、浮浪児に逆戻りする子どもも多かったのだろう。『あんぱん』で現在描かれているのは、昭和21年。同時代を描いた『虎に翼』のストーリーと比較すると、まだ日本国憲法は施行されておらず、寅子(伊藤沙莉)はまだ法曹界へは戻っていない。もちろん戦後の民放も家庭裁判所もない時代だ。薪鉄子(戸田恵子)は、司法が整備されていない状態で自分の信念にしたがって奮闘しているのだ。
児童施設はあるものの子どもたちが安心して暮らせる場所ではないことも多い。のぶは鉄子の目となって、代議士の立場からは見えにくい真実を受け止める使命を担っているのだ。

高知市内で暮らす蘭子(河合優実)とメイコ(原菜乃華)の元には、のぶから手紙が届いていた。文面からも東京での生活に使命を感じていることが察せられる。一方で、メイコの関心は嵩からのぶへの恋心。メイコは、千尋(中沢元紀)からのぶへの恋心を唯一察していた人物だからこそ、戦争で生き残った嵩には思いを伝えてほしいと思っているのかもしれない。





















