『冬のさ春のね』第8話で文菜と山田の関係に新たな一歩? 映画×ドラマが両立する真骨頂

『冬のさ春のね』文菜と山田の関係が進展?

 3月11日に放送された『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)第8話。前回の中盤でゆきお(成田凌)が提案していた通り、文菜(杉咲花)の誕生日にあわせて伊香保温泉を訪れる二人。温泉に浸かり、散歩をしてアイスを食べながらビールを飲んだり、風呂上がりに卓球に興じたり。すでに文菜の過去の恋愛についての回想から、現在の恋愛(すなわち、ゆきおとの関係だ)に向きはじめたこのドラマ。この序盤のような、穏やかで何てことのない時間が流れる様は、実に愛おしいものがある。

 同時に、こうした愛おしくて何てことのない時間にこそ、このドラマがあらためて“テレビドラマの枠組みのなかで映画をやる”、その両者の中間にいることを証明するようなマジカルな瞬間がたびたび現れる。たとえば部屋での夕食のシーン。“口”の負担が多いという他愛もない話題から、「片耳がしゃべる口になったら?」というゆきおの仮説に基づいて、画面の右から左に交互に移動しながら試してみる二人の様子。画面いっぱいを使おうとする映画的な動きをする二人に対し、カメラはあえて二人を画面中央に配置しようと――いかにもテレビドラマ的に小さく動きつづける。

 対して翌朝、ゆきおが文菜にニットを贈るシーンでは、手前に布団が敷かれたままの和室を配置し、画面奥の広縁の部分でのやり取りを見せる。かと思えば、文菜はそれを着るために和室を隔てた反対側の部屋へ向かう。その切り返しでも、和室越しに文菜が障子の向こうにいることが確認できる。温泉旅館という和の空間特有の奥行きを巧妙にとらえた映画的な構図だ。そういえば、ここ数年の今泉力哉作品といえばヨーロピアン・ビスタ(1.66:1)の画面比が採用されることが多かったが、本作はテレビ画面にぴったりはまるHD画面。文菜とゆきおが画面の両端にいる卓球のカットこそ、ヨーロピアン・ビスタで観てみたかった。

 さて、物語として大きな動きが見られるのは温泉から帰ってきてからの後半である。いわば温泉から帰ってきた後の“現在”の時間軸から、楽しかった温泉旅行という“過去”を回想しているかのような感触だ。風邪の兆候を察し、自宅で休んでいた文菜のもとにやってくる山田(内堀太郎)。自ら山田を呼び出した文菜は、そこで彼に「もう会うのをやめよう」と告げる。山田と曖昧な関係を続けることは、ゆきおに対する裏切りだと悩んできた文菜にとって、かなり大きな一歩を踏みだしたといってもいいかもしれない。

 自身の思いを吐露する文菜は、伊香保でゆきおが白い大きな犬と戯れていたことを振り返る。そういえば、前回のエピソードで河川敷を文菜と山田が一緒に歩いているとき、山田は正面からやってきた犬を怖がるようにして避けて歩いていた。そうしたところで山田とゆきお、二人の男の対照性が垣間見えるわけだ。対照的な二人の男に、それぞれ惹かれているのは文菜であり、そういった意味では大きな一歩を踏み出しつつも、やっぱりどうにも煮え切らない感じが否めない。

 だがそれ以上に、ここでの一連では山田の煮え切らない感じのほうが目立つかもしれない。現に、文菜が眠りに就いたら出ていくと言っていた山田は、文菜が眠った後もしっかりと部屋でくつろいでいるではないか。そこにタイミング悪くやってきたのは小太郎(岡山天音)であり、これがゆきおじゃなくて本当に良かったと思えてしまう時点で、どことなく文菜の共犯者にでもなったような気分だ。

『冬のなんかさ、春のなんかね』の画像

冬のなんかさ、春のなんかね

小説家で古着屋バイトの主人公・文菜は、過去の経験から恋人と真剣に向き合うことを避けていた。そんな文菜が自分の恋愛を見つめ直していく。演出には、映画監督の山下敦弘と山田卓司も参加している。

■放送情報
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、栁俊太郎、細田佳央太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
脚本:今泉力哉
監督:今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Homecomings 「knit」(IRORI Records / PONY CANYON)
プロデューサー:大倉寛子、藤森真実、角田道明、山内遊
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:AX-ON、Lat-Lon
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/fuyunonankasa/
公式X(旧Twitter):https://x.com/fuyunonankasa
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