『あんぱん』高知新報トリオが愛おしい 津田健次郎×倉悠貴×鳴海唯が支えた戦後編

気づけば、ゴールまで残り約2カ月となったNHK連続テレビ小説『あんぱん』。前半戦では、蘭子(河合優実)との純愛が話題となった豪(細田佳央太)や爽やかな好青年ぶりで人気を博した(中沢元紀)、数々の金言を残した寛(竹野内豊)など、視聴者に愛された数多くのキャラクターが退場していった。
そのロスを埋めてくれたのが、戦後にのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)が入社した高知新報の同僚たちだ。どのキャラクターも個性が強く、長らく物語に流れていた重たい空気を一瞬にして晴らし、明るいムードをもたらしてくれた。
東海林(津田健次郎)

特に視聴者から好評だったのが、のぶの就職を後押しした津田健次郎演じる直属の上司で東海林である。その魅力は何と言っても、ハードボイルドな見た目に反したお茶目さだろう。闇市でのぶをスカウトしたのに泥酔で覚えていなかったり、部下の前で東京に行ってみたいという私情を隠しきれなったり、屋台のおでんにあたって腹を下したりと、思わずズッコケそうになる間抜けな場面も多々。
しかし、誰よりも熱いジャーナリズム精神の持ち主で、戦時中の反省から真実の追求にこだわる東海林。そのためなら上に楯突くことも厭わない。のぶの原稿にも厳しいダメ出しをするし、自分が納得いくまで書き直させるけれど、ここぞという時には褒める最高の上司だ。
そんな東海林のオンとオフのギャップを巧みに演じ分け、視聴者を魅了した津田。その低く落ち着いた声のトーンから繰り出される台詞の一つひとつに重みがあり、胸にずっしりと響いてきた。
岩清水(倉悠貴)

2020年度後期放送『おちょやん』に続き、2度目の朝ドラ出演となった倉悠貴が好演した岩清水。東海林の片腕的存在で仕事ができるが、実のところ入社時期はのぶとあまり変わらない「ほぼ同期」だ。だが、ベテランの先輩のような安心感があり、のぶのことも温かく支えた。
倉が『おちょやん』で演じたのはヒロイン・千代(杉咲花)が生き別れた弟のヨシヲ。子供の頃は屈託なかったが、過酷な家庭環境に耐えきれず、家を飛び出した後は裏社会に足を踏み入れることになる。千代と10年以上ぶりに再会を果たした頃には、世の中に対する怒りがひしひしと伝わってくるような鋭さがヨシヲにはあった。
岩清水を演じる倉は全くの別人で、鋭さは皆無。むしろパッと見でも良い人と分かるような柔らかいオーラが滲み出ている。そんな岩清水だからのぶに未回収の広告費取り立てに向かわせようとする東海林に「女の子には無理ですよ」と言ったときも嫌味は一切なく、本気で心配していることが分かった。
一方で、東海林に対しては意外とズバズバとツッコミを入れる一面も。2人の信頼関係が垣間見える掛け合いも視聴者の一つの楽しみだった。岩清水はいろいろと深掘りすれば面白い話が出てきそうなキャラクターで、『おちょやん』からの5年、映画やドラマに引っ張りだこだった倉の豊富な経験が生かされていたように思う。




















