『あなたを奪ったその日から』が示した家族の選択肢 復讐ドラマの折り返し地点に

『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)最終話は、刮目すべきドラマの新生面を示した(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。
美海こと萌子(一色香澄)を旭(大森南朋)のもとへ返してからというもの、紘海(北川景子)は生きる気力を失っていた。結城家での生活と新しい環境に慣れてきたように見える萌子だったが、ある日、置き手紙を残して姿を消す。
最終話のエピソードがはじまり、出てくるキャラクターの誰もが浮かない顔をしていた。紘海だけでなく、望月(筒井道隆)、玖村(阿部亮平)と梨々子(平祐奈)、砂羽(仁村紗和)は、明らかに行き詰まっている。その原因が、作中の11年前に起きた食品アレルギー事故と、ようやく明かされた真相にあることは明らかだ。時を同じくして、行方不明だった萌子が見つかり、全てが収まるべき場所に収まったにもかかわらず、釈然としないものがあった。
誰もが悔いている。自分がしてきたことは、本当にこれで良かったのか。もっと別のやり方があったんじゃないか。自分は何を守ろうとしたのか、という葛藤が、自問自答として表情にあらわれていた。端的に、正しさにどう向き合うかが最終話で問われていたと言える。
今作の壮大な仕込み、誘拐された女児が亡くなったわが子と同じ、電車好きだったという設定は、感情を揺さぶる装置、別の名前で暮らす少女が同一人物であることの伏線、淡い初恋と実親の元へ戻るきっかけとして、ドラマ中で機能してきた。しかし、それがもたらす最大の効果は最終話にあった。紘海が美海の誕生日に行こうと約束した姥捨駅は、日本でも数少ないスイッチバック方式(折り返し運転)の線路を持つ駅で、鉄オタの聖地であることはこれまでも言及されている。
旭が立ち上げたスーパーのブランドもスイッチバック。これは偶然ではなく、そこには娘に対する愛情が込められていて、捜索する父親にとっては、発見のきっかけになればという期待もあっただろう。作中における意味は、ドラマ全体のテーマと結びついていた。紘海を待つ美海の耳に飛び込んできたなつかしい声、次いで視界に入ったのは母の姿だ。たとえ母が諦めても娘は信じていて、血のつながらない紘海と美海は、親子以上の親子になったように感じた。そうさせたのは二人が過ごしてきた年月だ。


























