『ブギウギ』『マッサン』『あんぱん』 朝ドラの“玉音放送”を通して描かれた女性像

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第12週では、太平洋戦争後期と終結が描かれる。敗戦の色が濃くなり、暮らしも貧しくなっていく中、軍国主義に染まっていたヒロイン・のぶ(今田美桜)は、終戦の時をどう迎えるのか。中国・福建省にいる嵩(北村匠海)は無事に日本へ戻れるのか、恋人を失った蘭子(河合優実)の反応は? それぞれの気持ちや関係も、ここを起点に変化していくのだろう。

朝ドラでは、終戦は「玉音放送」で表現されることが多い。『マー姉ちゃん』(1979年度前期)、『とと姉ちゃん』(2016年度前期)、『べっぴんさん』(2016年度後期)、『ブギウギ』(2024年度後期)など、戦中・戦後を描く作品のほとんどすべてで「玉音放送」が流されている。現人神とされていた天皇陛下自らがラジオで直々に国民に話すということで、誰もが緊張した面持ちで傾聴する様子が描かれてきた。ところでその放送内容は、音声も不明瞭だった上に言葉も難しく、一般庶民のうちどれだけの人々が理解していたかわからなかったとも言われている。
『ブギウギ』では、スズ子(趣里)たちが巡業先の富山の旅館で玉音放送を聴く。「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び、もって万世のために太平を開かんと欲す……」と、やはりなかなか理解するのは難しい言葉だ。神妙な空気の中で、小夜(富田望生)は「よく聴こえねぇんだけど、なんのこど言ってんだ?」とお決まりのすっとぼけた発言をする。しかし、ほとんどの庶民はきっと同じことを思っていたはずで、なんとなく「日本が負けた」「戦争が終わった」のだろうと、雰囲気でわかったということだったようだ。
『ブギウギ』を貫く“さよならだけが人生だ” 戦争と地続きの戦後を描く意義
2月に入り、NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『ブギウギ』がいよいよ大詰めを迎えつつある。 本作は「ブギの女王」と呼ばれた…「玉音放送」への登場人物たちの反応もさまざまだが、エンタメライターの木俣冬は、脚本家・岡田惠和の言葉を引用しながら、こう分析している。
「終戦――しかも敗戦を伝える天皇陛下のお言葉を聞く場面では、たいてい皆、神妙に聞いているが、男性は一様に無念そうな表情をし、女性は少し淡々としていることが多い」。(※1)
『エール』『純情きらり』『とと姉ちゃん』など、朝ドラで“戦争と芸術”はどう描かれた?
“朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『エール』は17週からかなりシリアスになってきた。裕一(窪田正孝)が軍の要請で戦時歌謡をたくさ…確かに、『ブギウギ』のスズ子も涙を流すことはなかったし、『とと姉ちゃん』の小橋常子(高畑充希)にいたっては、「よ〜し、これで好きな雑誌が作れるようになる」と歓喜している。『マッサン』(2014年度後期)では、マッサン(玉山鉄二)が妻のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)に「もう自由じゃ」と伝えると、スコットランド人のエリーは安堵のあまり倒れてしまったりもする。女性にとって終戦は、悔しさより安堵や開放感の方が強かったのかもしれない。






















