『あなたを奪ったその日から』大森南朋が背負う後悔の苦さ 阿部亮平が暴いた偽りの顔

『あな奪』大森南朋が背負う後悔の苦さ

 『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)第8話は、物語のターニングポイントとなる放送回だった(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。

 砂羽(仁村紗和)は、紘海(北川景子)が死んだ灯(石原朱馬)の母親であると突き止めた。紘海は自分と「目的が一緒」と言う砂羽は、自らが鷲尾(水澤紳吾)の娘であると明かし、手を組もうと持ちかける。事件直後、鷲尾の預金口座に旭(大森南朋)の名義で500万円が振り込まれており、砂羽はそれを口止め料と考えた。ピザにエビを入れたことを鷲尾は否定しており、当日、厨房にいた誰かがアレルギー食材を混入させたと考えられた。

 旭を知るにつれて、紘海の中で葛藤が増していった。その思いが決定的になる出来事があり、紘海はスイッチバックに辞表を出すことになる。発端は美海(一色香澄)とのケンカ。駅員の柊(小林虎之介)に思いを寄せる美海は、紘海に無断で外出。柊と一緒にいるところを紘海に見とがめられたが、これは誤解だった。しかし、このことがきっかけで親子の関係はぎくしゃくする。美海は紘海が隠しごとをしていると非難し、出ていってしまう。

 紘海が箱の中に隠していたのは灯の写真と思い出の品で、美海に見せるわけにいかない。辛さを忘れるように仕事に没頭する紘海を気に留めた旭は、残業に付き合い、二人きりのオフィスで語り出した。それは、10年前の事件と被害者遺族への感情、萌子がいなくなったことで初めてわかった子どもを奪われる苦しみと後悔であり、まさに紘海が経験し、旭に味わわせたいと願っていたものだった。

 殺したいほど憎い相手に願ったとおりの苦痛を与えた紘海が、旭の告白を聞いて感じたのは、予想外の心の動きだったと思う。仮に、紘海が旭のことをよく知らない状態で相手が苦しんでいると知っても、因果応報だと納得したかもしれない。しかし、紘海はすでに旭と似た痛みを共有していて、二人の間には共感にも似た心のつながりがあった。苦痛を与えた相手を人間として理解することで、自身の中に眠る同じ苦しみが蘇ることになった。

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