『あなたを奪ったその日から』大森南朋が背負う後悔の苦さ　阿部亮平が暴いた偽りの顔

　その結果、紘海が直面したのは罪の意識だ。萌子がいなくなったのは自分のせいと責め、事件の遺族に申し訳なかったと詫びる旭を見て、もはや紘海の中で旭を責める理由はなかった。一方で、許されないことをしてしまったという罪悪感が大きくなって、目の前に迫ってきたのではないだろうか。紘海の選択肢は、その場を去ることしかなかっただろう。

　嘘はいつかバレるものだが、一番強烈なのは無意識のうちに自分をだましていたときで、相手に向けた感情がそのまま自分に突き刺さる。紘海が旭についた嘘はふたつある。ひとつは灯の母親であることを隠していたことだ。紘海はバレる前に旭の前を去ったが、玖村（阿部亮平）が気づいたことで、旭は後に知ることになった。

　禁酒していた旭が、紘海の前で残りもののビールを飲もうとしたのは、旭が紘海を同じ痛みを抱える人間と認めたからだろう。そこから始まる約5分に及ぶ述懐は、聞き手である北川景子演じる紘海の応答と沈黙を織り交ぜつつ、苦さが口の中に浸透するような深い余韻のある名演技だった。

　紘海がついていたもう一つの嘘は、萌子を自分の娘として育てていることだ。ここでは紘海は加害者で、責められる立場である。真実を知った旭はどんな感情の変化を示すだろうか。こちらについては、望月（筒井道隆）が紘海と美海のつながりに勘づいた形跡がある。旭のもう1人の娘、梨々子（平祐奈）は何を見たのか。感情が乱れそうな展開に備えて、心の準備をしておいたほうがいいかもしれない。

■放送情報
『あなたを奪ったその日から』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00～22:54放送
出演：北川景子、仁村紗和、平祐奈、阿部亮平（Snow Man）、水澤紳吾、小川李奈、一色香澄、田山由起、内藤秀一郎、原日出子、鶴田真由、大浦龍宇一、中原丈雄、筒井道隆、大森南朋
脚本：池田奈津子
演出：松木創
企画：水野綾子
音楽：村松崇継
主題歌：back number「ブルーアンバー」（ユニバーサル シグマ）
プロデューサー：三方祐人
制作：カンテレ、共同テレビ
©︎カンテレ
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