今田美桜がセリフなしで伝える“心の震え” 『あんぱん』のこれまでにない戦時下のリアル

みんなが苦しんでいるなか、登美子は囚われていない。出征が決まった嵩に、心身ともに弱いから軍隊は向いていないと言ったのも、素直な気持ちであろう。素直に心配を語れず、わざと回りくどい言い方をしてしまったのかなと想像したが、いや、思ったことをストレートに言っただけなのかもと筆者は思い直した。心に浮かんだことを整理しないで口にしてしまう人はいる。
結果、嵩にほかに言い方があるだろうとがっかりされてしまう。すると今度は、公衆の面前で「死んだらだめよ、生きるのよ」「絶対に帰ってきなさい」「逃げ回ってもいいから ひきょうだと思われてもいい何をしてもいいから生きて、生きて帰ってきなさい」と言いだし、憲兵から「非国民」扱いを受ける。

登美子は世間体というものを一切考えず、思ったことを思ったように言ったりやったりする人なのだ。だから嵩を置いて再婚してしまう。つまりこのドラマにおいて登美子は最も自由な人だと言っていいのではないだろうか。
嵩が自由を標榜するならば、この母・登美子の自由も認めないといけない。その点において次郎はよくできた人である。のぶとは考え方が違っても否定せず、ただ彼女を抱きしめた。人間として次郎が一枚も二枚もウワテだ。
「生きろ」。でも自分と異なるものも認めたうえで。それが我々人類の課題である。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、志田彩良、二宮和也、瀧内公美、山寺宏一、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、阿部サダヲ、妻夫木聡、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















