『放課後カルテ』はなぜ“子どもと大人の理想の関係性”を描けたか 舞台裏にあった濃密な時間

“無愛想な学校医”というキャラクターで、松下洸平が地上波ゴールデンタイム単独初主演を務める連続ドラマ……『放課後カルテ』(2024年/日本テレビ系)の制作発表時、キービジュアルとそのわずかな情報だけで胸が踊ったのを今でも覚えている。結果的に、『放課後カルテ』は、子どもたちが患うさまざまな病、それと対峙したときの大人と子どもの葛藤を、優しく語りかけるように教えてくれた。
松下洸平主演『放課後カルテ』は後世に語り継がれる作品だ 数々の名シーンを振り返る
後世に残り、愛され続けるドラマの条件とはなんだろう。感動的なストーリー、記憶に残る個性的なキャラクターなどさまざまな条件があるが…5月21日に発売された『放課後カルテ』のBlu-ray&DVD-BOXには、テレビ放送された全10話のエピソードのほか、配信限定コンテンツの6.5話と7.5話も収録されている。本作は2011年から『BE・LOVE』(講談社)で連載されていた同名漫画を原作としているが、映像化されたどのエピソードからも、今描くべきという作り手からの強い意思が伝わってくる。
第1話ではナルコレプシー、第8話では場面緘黙症と、名前もあまり知られていない病気をテレビドラマで扱い、知識を授けるようなストーリーを紡ぐとともに、当事者に寄り添った。第3話では、心臓病を患う子を持つ親の思い、第6話では多忙を極める小学校教諭の悩みを取り上げ、大人の苦しみにも切り込んでいった。学校と家庭しかない小さな世界で生きる子どもたちが何に悩んでいるのか、大人は何をすべきなのか、どう接するべきなのか、学校と医療ドラマを掛け算した設定でありながら、『放課後カルテ』を観ていて感じるのは、子どもと大人の理想の関係性とは何かという普遍的なテーマだ。子どもに寄り添い、声をかけ、間違えたら謝る。そんな当たり前のコミュニケーションの大切さがすべてのエピソードから伝わってくる。

Blu-ray&DVD-BOXには、1時間半以上に渡る特典映像が収録されている。クランクインからクランクアップまで、3カ月間が凝縮されたメイキング映像から感じるのは、『放課後カルテ』という作品が、大人と子どもの理想の関係性の中で作られた作品であるということだ。
6年2組の児童役を演じる子どもたちとの出会いは教室から始まる。端から自己紹介していく様子は、まさにクラス替え後の小学校の教室そのもの。しかし、先生役を演じる松下や森川葵は、必要以上に先生然とした態度を取ることなく、どこかフラットだ。モニターチェックでは互いを褒めあうことも。

一方、感情を吐露する難しいシーンでは、演じる子役のために松下が口に出して役の感情を整理し、芝居のポイントの置き所を解説。第4話で自身の破壊衝動に苦しめられる水本羽菜役の小西希帆が、松下の言葉を真摯な眼差しで受け止めているのが印象的だった。子どもたちも松下に支えられるばかりじゃない。自分たちで役の感情を解釈し、アドリブを見せる場面も。賛辞を送る松下に対し、「いいでしょ〜」と自慢げな子どもたちの様子がかわいらしい。子どもたちと一人の俳優として対等に接しつつ、必要があればサポートする。休憩中は真剣に遊ぶ。メイキングのどの瞬間からも、現場の空気の良さが伝わってくる。





















