齋藤飛鳥の“無感情”な演技になぜ惹きつけられる? 『恋は闇』の沈黙の中にある深い余白

「理性や本能をどう操縦するか」という本作のテーマにおいて、齋藤演じる女性は、他の登場人物の感情や行動を揺さぶる“触媒”として機能する。ときに破壊者として、あるいは歪んだ庇護者として――彼女の“闇”は静かに、だが確実に物語を侵食していく不気味な存在だ。

そんな齋藤の演技が放つ“翳り”や“闇”には、一貫したトーンがある。それは美しくも不穏という、相反する感情を同時に喚起するもの。彼女は単なる暗い役を演じているのではない。“感情の不在”や“語られない過去”といった空白を、自身の佇まいと眼差しで体現してしまう存在なのだ。誰よりも“何も語らずに物語を動かす”ことができる俳優、それが今の齋藤である。
それゆえに、彼女の登場は常に物語の空気を変えてしまう。彼女は感情の爆発ではなく、抑制によって、観客の心を掻き乱す。『恋は闇』においては、それが“恐怖”として昇華された。過剰な演出や説明を必要とせず、ただそこにいるだけで観客を不安にさせる。その力は、演技者としての本質的な資質を物語っている。現代のテレビドラマにおいて、これほどまでに存在だけで恐怖を演出できる俳優はそう多くはないだろう。
今作で齋藤が演じるみくるも、彼女のこれまでのキャリアを見渡しても、ほとんど前例のないタイプの役だ。感情を排したような無表情、どこにも依存しない立ち姿、語らずして場の重力を変えてしまうその存在感――すべてが謎に包まれている。ただひとつ、万琴に向かって「私の浩くんを返して」と吐き出した場面にだけ、わずかに“個”の痛みが滲んだ。みくるが見ている浩暉、そして彼女が守ろうとする何か。それは、他者には決して触れられない記憶なのかもしれない。

表情を動かさない演技は、ともすれば平板にも映りかねないが、齋藤のそれは違う。むしろ情報を極限までそぎ落とすことで、観る者に問いを突きつけてくる。彼女の何気ない視線の揺らぎが、何かの予兆に見えて仕方ない。
次回、みくると浩暉の関係性が明らかになるようだ。そこで齋藤がどんな表情を見せるのか。みくるという謎の輪郭が、齋藤の身体を通して少しずつ浮かび上がるとき時、私たちはきっと、これまで見たことのない齋藤飛鳥に出会うことになるのかもしれない。
『あなたの番です』『真犯人フラグ』の制作スタッフが完全オリジナル脚本で描く“究極の恋愛ミステリー”。主人公・浩暉に次々と浮上する疑惑と、彼を愛したヒロイン・万琴の葛藤を通して、「真実を見抜けるか?」を描いてく。
■放送情報
『恋は闇』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:志尊淳、岸井ゆきの、森田望智、白洲迅、齋藤飛鳥、望月歩、小林虎之介、浜野謙太、猫背椿、西田尚美、萩原聖人、田中哲司
脚本:渡邉真子
音楽:末廣健一郎
監督:小室直子、鈴木勇馬
プロデューサー:鈴間広枝、能勢荘志、松山雅則
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
©日本テレビ
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