2025年のカンヌ映画祭が証明した“カンヌ”らしさ ジャファル・パナヒがグランドスラム達成

とはいっても『It Was Just an Accident』は、今回のカンヌの上映後に北米配給権をNEONが獲得。同社といえば、『パラサイト 半地下の家族』、『TITANE チタン』、『逆転のトライアングル』、『落下の解剖学』、そして『ANORA アノーラ』と、近6年のパルムドール受賞作5本の北米配給権をすべて獲得しており、うち4本がアカデミー賞作品賞にノミネートされ、2本が受賞。いわば、現在のアカデミー賞レースにおける非スタジオ組の、かつ賞の多様化に向けた急先鋒といえる存在なのだ。

それを考えると、パナヒの賞レース参戦がないとは言い切れないのだが、その可能性は決して高くない。というのも、パルムドールに次ぐグランプリに輝いたヨアキム・トリアー監督の『Sentimental Value(英題)』もNEON配給で北米公開が決定しており(むしろこちらは1年前のカンヌで権利を獲得していたようだ)、今回のカンヌでの上映時の反響の大きさから考えるに、こちらの方がオスカー向きと見える。どうやらスタンディングオベーションが20分近く続いたともいわれている。名優ステラン・スカルスガルドの助演男優賞を含め、NEONのオスカーキャンペーンの目玉となることだろう。

さて、最後に日本勢について簡単に触れておくと、コンペに出品された早川千絵の『ルノワール』を筆頭に、ある視点部門の『遠い山なみの光』、カンヌプレミアの『恋愛裁判』、ミッドナイト・スクリーニング部門『8番出口』、監督週間の『国宝』と『見はらし世代』と、いずれも受賞には至らずとも好意的に迎えられたようだ。とりわけジャンル映画に特化した部門とはいえ、『8番出口』のような典型的な娯楽作品が喝采を浴びたという点はなかなか興味深いものがある。





















