『キャスター』阿部寛が追求するジャーナリスト像とは? 利害と感情の先にある“正義”

『キャスター』害と感情の先にある“正義”

 進藤が川島に持ちかけたのは一種の取引である。損得でいえば、ユキノ(佐藤恋和)は手術を受けることができたし、進藤に情報を渡した警察は深沢を検挙することができた。独自取材でスクープを連発したテレビ局はしてやったりだろう。同時に華と川島の心情にも配慮していた。罪は罪として法の裁きを受けさせつつ、過去を引きずる父と娘の関係修復に寄与した。当初の狙い通りだったかは定かではないが、局面に応じて柔軟に戦略を変えながら、最終的なゴールを見失わない進藤の仕事の姿勢から学べるものは多い。

 その上で、進藤は本当のところ何をしたいのだろうか? 『ニュースゲート』にメインキャスターとして着任した理由はニュース番組をぶっ壊すことであるが、その根底にあるものがどうにも気になる。進藤の原点に1982年に起きた航空自衛隊のC1輸送機墜落事故があって、父である松原哲(山口馬木也)の死が大きく影響していることが窺われる。

 元妻の恭子(相築あきこ)から「過去にとらわれてるだけ」と見抜かれる進藤だが、報道に人生を捧げる背景に個人的な動機があるなら、それを知りたいと思ってしまうのが人情である。そう思ってしまう時点で進藤壮一という謎の多い人物に魅せられているのであり、すでに彼の術中にはまっているのかもしれないが。

『キャスター』の画像

日曜劇場『キャスター』

テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。

■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、山口馬木也、黒沢あすか、堀越麗禾、馬場律樹、北大路欣也(特別出演)、谷田歩、内村遥、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/caster_tbs/
公式X(旧Twitter):@caster_tbs
公式Instagram:caster_tbs
公式TikTok:@caster_tbs

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