『卓球少女』が描く“中国2Dアニメ”の可能性とは? アニプレックスPをうならせたこだわり

『卓球少女』が描く“中国2Dアニメ”の可能性

 中国の杭州市にあるアニメスタジオ「画枚動画」が初めて手がけたオリジナルアニメ企画で、2024年にビリビリ動画とテンセントビデオで配信されて大評判となった『白色閃電 Pingpong!』の日本語吹替版が『卓球少女 -閃光のかなたへ-』として5月16日から劇場公開中だ。

 卓球に挑む女子高生たちを描いたスポーツもので、声優ユニット「TrySail」として活動する夏川椎菜、雨宮天、麻倉ももの3人と戸松遥がメインキャラをそれぞれ演じることで話題になっている。卓球王国の中国が手がけたこともあって、リアルで迫力たっぷりの卓球シーンも含めた本作の見どころや日中アニメ産業の事情を、アニプレックスのプロデューサー・孫宗楨(ソン・ソウテイ)氏に聞いた。

『卓球少女 -閃光のかなたへ-』日本公開の手応え

——いよいよ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』が日本で公開されました。何か手応えのようなものは感じてますか?

孫宗楨(以下、孫):やはり声優のファンの方や「TrySail」ファンの方に一番多く観ていただいている印象ですが、卓球がテーマになったアニメ映画として興味を持っていただいた方もいらっしゃるようで、嬉しく思っています。

——ティザーPVが公開されたのが2021年。再生回数は180万回に達して、中国だけでなく日本でも話題になりました。2024年に配信が始まったときは、1ヵ月で1000万回の再生回数に達して前評判どおりの人気を獲得しました。アニプレックスが今回の日本語吹替版を手がけたのは、こうした評判を見たからですか?

孫:2021年にタイトルが発表されティザーPVが公開された時点で、すごくクオリティーの高い作品だと思って興味を持ったのが最初です。どこのアニメスタジオが手がけた作品なのかを調べて、これまでに付き合いのある会社からも伝手を辿ってスタジオに接触して、いろいろとお話を聞かせてもらいました。そのときはまだどういうフォーマットになるのか、映画なのかテレビ向けなのかも分かっておらず、日本で展開すると決めていたわけではありませんでしたが、作品が出来上がっていって配信が始まるまでには、日本で展開する話になってきていました。

——配信がしっかりヒットしたことで、日本でもいけると思われましたか?

孫:そうですね。この作品は中国でも珍しく原作がないオリジナル作品だったので、中国でどこまで受け入れられるのか注目していました。日本で展開することはすでに相談をしていたので、結果が出たことで面白い作品なんだという見方は間違っていなかったと思います。

——そもそもこの『卓球少女 -閃光のかなたへ-』のどこに魅力を感じて日本での展開を決めたのでしょうか。

孫:ひとつは3DCGの作品ではなく、日本のアニメファンにとってなじみのある2D作品で、女の子が主人公だったということがあります。それから、PVのクオリティーがとても高かったことですね。キャラクターのデザインも日本のアニメに近かったですし、ストーリーについても日本の漫画のようなところがあって、受け入れられやすいと思いました。

——それぞれに事情を持った少女たちが集まって、競い合いながら仲間になっていくというのは漫画でもアニメでも王道中の王道ですからね。

孫:制作途中のVコンテを見せてもらって、しっかりとしたストーリーになっていると感じました。あとは、やはり卓球の描写が超絶リアルなところに惹かれました。こんなに動くのか、と。卓球に詳しい方がアドバイザーとしてついていたそうで、試合の流れから卓球をする動作、途中のラケットをぬぐう仕草まで本当にリアルでした。バスケットボールをかじっていた自分にも、同じスポーツをしていた者として分かるリアルさがあって、それが物語の確かさに繋がっているように感じました。

——野球やサッカーやバスケットボール、バレーボールといったスポーツの漫画やアニメなら日本でも実績がありますが、卓球となると数が少なくなります。その点で不安はありませんでしたか?

孫:スポーツものが多いといっても、バトル要素を強めたものもあれば、競技を丁寧に描いているものもあると思います。ただ、ここまで真面目に卓球をやっていて、試合のシーンを丁寧に作っている作品はあまりないので、逆に関心を引けるのではと思いました。

——選手の動きにスピード感があって、足の筋肉の表現なども含めてしっかりと卓球をやっている感じが出ていました。

孫:本当に細かいところまで表現されていて、1回観ただけでは気がつかないところもあります。それが2回3回と観るうちに「そういうことだったんだ」と繋がるんです。ライバルキャラのワン・ルーはバックハンドが苦手なんですが、初めてジャン・ルオイと対戦したときに「良い1球だった」と言われた球筋がバックハンドで打ったものだったんです。それから終盤の勝負でも、決めの1手にバックハンドが関係している。そういうところも含めて、何回か観れば気づくことがたくさんあるかもしれません。それくらいしっかりと作られている作品です。

——日本でも、『THE FIRST SLAM DUNK』がバスケットボールの試合の流れをリアリティたっぷりに描いて、観客を本当の試合を見に来ているような感覚にさせてヒットしました。『卓球少女』にも同じように、卓球そのものを観る楽しさがあると言えますね。

孫:『SLAM DUNK』は神の領域ですから比べていいのか……という感じですが、目指しているところは同じじゃないかなと思います。ジャン・ルオイやワン・ルーに関しては、「そういう打ち方は現実ではしないだろう」とツッコまれるようなところはありません。ディン・シャオだけは少しアクロバティックなところがあってリアルさから外れるかな。(ディン・シャオは)“アニメっぽい”要素が多いですが、変に真面目な方向に走り過ぎず、そうしたキャラも入れておくことでバランスが取れて、観て楽しいエンターテインメント作品になったと思います。

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