トム・クルーズはなぜ60歳を過ぎた今なおカッコいいのか 『M:I』イーサンに反映された覚悟

トム・クルーズがカッコよくあり続ける理由

 そしてクルーズは、同会見で「チャレンジが大好き。常に目標を持ち、山を登り続けて、また新しい頂きを“自分で”作っていく」と語ったように、もうこれ以上の過激さは不可能と思われるアクションをノースタントで挑み続ける。

 シリーズ第1作の『ミッション:インポッシブル』では、クルーズ演じるイーサン・ハントがCIA機密ルームへ天井から侵入するときの宙吊りアクションが印象的であったが、続く『M:I-2』(2000年)ではロッククライミングやクライマックスのバイクチェイス、第4作『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年)では世界最高層ビルであるブルジュ・ハリファの外壁を登るなど、過激さは増す一方。「演技をするということは、肉体的にも精神的にも、自分の持てるすべてをキャラクターに注ぎ込むこと」と語り、5作目となる『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』では離陸する飛行機にしがみつくという超絶アクションを披露した(※4)。このときクルーズは53歳。一流のトレーニングチームを作り、常に体を極限まで鍛えているからこそ可能だったのだろう。

 そんなクルーズは普段から「揚げ物は食べない」「炭水化物、砂糖とも縁を切る」など厳格な食事コントロールをしているほどストイック(※5)。一方で人にはよくケーキを贈るのだそう。「自分の代わりに人に食べさせて感想を聞いて楽しむため」だとか(※6)。そんなお茶目さも彼の魅力の1つだ。

 また、シリーズを何度も観ているうちに、イーサンが繰り返し口にする2つのフレーズがあることに気づいた。「I’m working on it.(今取り組んでいる/やっている)」と「I’ll figure it out.(なんとかする/やってみせる)」である。決して 「I’ll do my best(ベストを尽くす)」 とは言わない。「なんとしてもやりきる」と、そんな覚悟がこの2つのセリフには込められている。そしてそれは会見で報道陣に向けて「足を止めず走り続ける。何があっても諦めない」と語るクルーズ自身の思いが乗った言葉でもある。

 さらに、クルーズの凄さはアクションだけではない。実は目の演技が卓越している。単にわかりやすく感情を“見せる”のではなく、心の深層の熱が瞳の奥から伝わってくる印象がある。セリフはなく、ただ目を細める、眉間に皺を寄せる、片方の眉が動く、少し首をかしげたまま相手の目をまっすぐ見る……そんな微細な動きなのに、感情がぐいっと持っていかれてしまう。自在にコントロールするのは大きな筋肉ばかりではないのだ。そしてここぞという決めのカットでは、ほとんど瞬きをしない。『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の後半、1分近くにわたって瞬きをせず、敵と対峙しているシーンが見られる。その目には本物だけが持つ”力強さ”が宿っていて、観ている側の感情を増幅させる。アクションだけではなく“目”が語る力強さも、クルーズの大きな魅力といえる。

トム・クルーズの“トムクル力”を堪能せよ! 『ミッション:インポッシブル』シリーズを総括

トム・クルーズ! 80年代に彗星のごとくデビューを果たし、今日もハリウッドの最前線でハンサムを振りまいているスター中のスターであ…

 「I just keep on going」と、年齢を言い訳にせずとにかくやり続ける。そこに迷いは微塵もなく、決して歩みを止めない。だからこそ、クルーズは私たちを魅了し続ける。

※1. https://missionimpossible.jp/news/2025/05/07/info54/
※2. https://missionimpossible.jp/news/2023/07/07/info16/
※3. https://www.gizmodo.jp/2025/05/mission_impossible_the_finalreckoning.html
※4. https://hollywoodreporter.jp/movies/101277/
※5. https://www.25ans.jp/celebrity/celebrity-life/g40452928/tomcruise60-220630/
※6. https://front-row.jp/_ct/17194420

■放送情報
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
日本テレビ系にて、5月23日(金)21:00~23:39放送
※放送枠45分拡大 ※本編ノーカット
出演:トム・クルーズ(森川智之)、ジェレミー・レナー(花輪英司)、サイモン・ペッグ(根本泰彦)、レベッカ・ファーガソン(甲斐田裕子)、ヴィング・レイムス(手塚秀彰)、ショーン・ハリス(中尾隆聖)、サイモン・マクバーニー(佐々木睦)、チャン・チンチュー(御沓優子)、トム・ホランダー(山岸治雄)、イェンス・フルテン(宮内敦士)、アレック・ボールドウィン(田中正彦)
監督・脚本:クリストファー・マッカリー
ストーリー:クリストファー・マッカリー、ドリュー・ピアース
製作:トム・クルーズ、J・J・エイブラムス, ブライアン・バーク、デヴィッド・エリソン、ダナ・ゴールドバーグ、ドン・グレンジャー
©2025 Paramount Pictures.

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