いま改めて振り返る『ジョジョ』の凄み 受け継がれる“黄金の精神”から”漆黒の意思”へ

『ジョジョの奇妙な冒険』第7部が『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』としてアニメ化されることが発表されてから、およそ1カ月が経った。
驚くのは、今回の発表はイメージビジュアルと特報映像の公開のみで、スタッフやキャストだけでなく、放送時期すらもアナウンスされていないこと。2004年に連載を開始し、2011年に幕を閉じた『スティール・ボール・ラン』(以下、『SBR』)は、気づけば14年前の作品となっているが、今でも多くのファンを熱狂させる人気と絶大な支持を得ている荒木飛呂彦作品の一つであることを、改めて知らしめる結果となった。
『ジョジョ』第7部『スティール・ボール・ラン』アニメ化決定 PV&キャラビジュアルも
『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』のアニメ制作が決定し、あわせて特報PVとイメージビジュアル、キャラクタービジュ…発表は、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのファンイベント『JOJODAY STAGE』のラストに行われた。事前に「『これまで』と『これから』を繋ぐファンイベント」と銘打たれていたことも相まって、おそらくほとんどのファンが『SBR』を期待していたはずで、筆者もその一人だった。筆者は配信でその瞬間を見届けていたが、アフタートークでキャスト陣が触れていたように、得も言われぬ参加者の「期待」が会場に満ちていたのを、配信からも感じられた。
『ジョジョ』第7部、アニメ化の鍵は“馬上バトル”? ジョニィ役を担当する声優にも注目
荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』(集英社)が遂にアニメになる。『ジョジョの奇妙な冒…それらを可視化したのが、アニメ化発表の翌日からスタートした『ジョジョキャラバン』だ。『SBR』の魅力を原作の複製原画展示で伝えるアニメ化決定記念企画で、東京・渋谷会場を皮切りに、先日京都での展示が終わったばかり。「1st STAGE」「2nd STAGE」という数え方は、原作の「スティール・ボール・ラン」レースになぞらえたものだ。筆者も運良く渋谷会場のチケットをゲットすることができ、現地に足を運んだ。青鉛筆で書かれた荒木によるアシスタントへの指示に興奮しながら、今『SBR』を読んで感じるのは、現在連載中の第9部『The JOJOLands』ともリンクする部分があること。それは「土地」「金」の2つの要素。荒木は『SBR』の第1巻、第2巻の作者コメントで下記のように伝えている。
「このSBRは、実質的に「ジョジョの奇妙な冒険」PART7として描かれているものですが、初めてここから読み始める読者のために、あえてそのことを強調したくないと考えました。しかし一方で、漫画家の創作に対する姿勢の問題として、過去の作品を完全に葬り去ってまったく新しい作品を描こうというのは、良くない態度だとも思ったのです。作品のテーマというのは、過去から連続していなくてはならないのです。」(『SBR』第1巻、作者コメントより)
「季節がうつり変わるように、あるいは人が人生を歩むように、作品のテーマというものも過去からの延長線上になければと思うのです。断ち切ることは、してはいけないと考えます。SBRには「ジョジョの奇妙な冒険」に登場したキャラクターに似た名前の人物が出て来ますが、彼らの先祖と考えるかあるいは、パラレル・ワールドと考えてください。テーマは同じ人間讃歌。人生という奇妙なレースを登場人物たちはどう突き進むのか!?」(『SBR』第2巻、作者コメントより)
先述したように、この荒木の考え方は、『SBR』以降の『ジョジョ』シリーズにも継承されており、荒木が明言しているように、例えば『SBR』の主人公であるジョニィ・ジョースターとその相棒のジャイロ・ツェペリ、さらに宿命の相手であるディエゴ・ブランドーといったように、第1部「ファントムブラッド」の登場人物たちを連想させる。ジョニィの本名は、ジョナサン・ジョースター。ペットとして密かに飼っていた白ネズミの名前はダニーと、第1部の主人公であるジョナサン・ジョースターを明確に意識した人物として描いている。
ただ、それはあくまで似て非なる人物像であり、象徴的なのはその意志だ。第1部のジョナサンから、第6部「ストーンオーシャン」の空条徐倫まで、ジョースター家に脈々と受け継がれる血統、そして「黄金の精神」。第4部「ダイヤモンドは砕けない」でジョセフ・ジョースターが示した「黄金の精神」は、第4部の舞台・杜王町に住む東方仗助をはじめ、岸辺露伴にも流れる「正義」の輝き。第5部「黄金の風」で「『覚悟』とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!!」と叫び、逆境に立ち向かっていった主人公のジョルノ・ジョバァーナがその好例だ。






















