『ジョジョ』第7部、アニメ化の鍵は“馬上バトル”? ジョニィ役を担当する声優にも注目

『ジョジョ』7部、アニメ化のポイントは?

 荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』(集英社)が遂にアニメになる。『ジョジョの奇妙な冒険』のアニメシリーズを手がけてきたワーナー・ブラザース・ジャパン合同会社アニメプロダクション部門が『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』のタイトルで制作決定を発表。北米大陸を大勢の人間が馬に乗って横断しながらバトルを繰り広げるという、壮大で凄絶なストーリーがどのように映像化されるのかに誰もがワクワクしている。

『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』 特報映像/"STEEL BALL RUN JoJo’s Bizarre Adventure" Anime Announcement trailer

 馬が走る。それも大量に。スティーブン・スティールという男が打ち出した、北米大陸を西海岸のサンディエゴビーチから東海岸のニューヨークまで馬で走って、最も速く走りきった者に5,000万ドル(60億円)の賞金を与えるレースを描く『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』には、大勢の人間が馬に乗って走る場面が絶対に欠かせない。

 3,852人もの参加者がひとり1頭ずつ馬に乗っていたとしたらその数は3,852頭。中には舞台となっている1890年の時点ですでに発明されていた自動車を使ったり、自分の足で走ったりする者もいるが、それでもとてつもない数の馬がサンディエゴビーチにずらりと並び、一斉にスタートを切って6,000km先のゴールに向かって走り出す。

 そうした参加者たちの一部だけ抜き出しても、数頭から10数頭には及ぶ馬が猛スピードで疾走しながらぶつかり合ったり、馬を駆っている参加者同士でて戦ったりする場面を、アニメとして果たして動かし切れるのかが大いに気になる。馬の走りは1頭だけでも複雑だからだ。

 1878年に写真家のエドワード・マイブリッジが、12台の撮影装置を並べて馬が走る姿を連続写真に収め、4本の足が揃わないで動いていることを解析してみせた。そこまで深く観察して分かる足の動きを当てはめながら、顔があって上にはレースの参加者が乗っている馬をどこまで描き分けられるのか。馬にも個性があることが、「#6 涸れた川:ディエゴ・ブランドー」の中で指摘される。そうした描写を手描きで行うにしても、CGで描くにしても、とてつもない労力とセンスが求められるだろう。なおかつ荒木飛呂彦が描くキャラクターたちも再現しなくてはならない。大変すぎるとしか言い様がない。

 ここに挙がった「ディエゴ・ブランドー」という名前が示すように、『スティール・ボール・ラン』は『ジョジョの奇妙な冒険』のシリーズを漫画で読み、アニメで観てきた人たちにとってどう受け止めて良いか迷う作品として始まった。今でこそ『Part7』としてシリーズにがっしりと組み込まれているが、『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった時、タイトルは単なる『スティール・ボール・ラン』で続編といったニュアンスに乏しかった。

 掲載された「#1 スティール・ボール・ラン 記者会見」に登場したのも、「ディエゴ・ブランドー、通称Dio!」と呼ばれる天才ジョッキーで、『ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド』に登場して主人公のジョナサン・ジョースターと対立し、シリーズを通しての敵となるディオ・ブランドーとは違っていた。同じく「#1」の終わりに登場する男もジャイロ・ツェペリという名で、ジョナサンの師となるウィル・A・ツェペリと同姓ながら姿はまるで違っていた。

 そもそも「ジョジョ」の名を持つ者がいなかった。これはシリーズというよりスピンオフだと思わせていたところに、「#2 ジャイロ・ツェペリ」の終わりでジョニィ・ジョースターが登場する。そして、展開の中で彼がツェペリに半ば師事しつつ成長しながら困難に打ち勝ち勝利を目指すという、『ジョジョの奇妙な冒険』を名乗るに相応しい作品であることを見せていく。ジャイロが背負う運命が、貫かれる正義の尊さを感じさせるところもそうした要素のひとつだ。

 とはいえ、『ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン』からの直接の続編ではなく、そもそも過去のシリーズと同じ世界ではなさそうなところが、『スティール・ボール・ラン』を楽しむ上で悩みどころになり、同時に利点にもなっている。ジョナサンとディオの因縁が、血筋をたどって後世につながっていく中で起こるドラマでありバトルを描いてきたシリーズの要点がスパッと断ち切られる。これは、波紋からスタンドへと続いた一種の異能力もリセットを余儀なくされるということだ。

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