『デジモン』『プリキュア』 東映アニメーションはなぜ長く愛される作品を生み出せるのか?

神木優Pに聞く、東映アニメーションの強み

グローバル化と少子化、構造的な変化にどう対応するか

――東映アニメーションは、長期的に愛される作品をいくつも手掛けています。なぜ東映アニメーションはそれが可能なのでしょう?

神木:東映アニメーションはアニメ製作だけではなく、商品を扱う部門やイベントを担当する部門などの営業部門があり、営業のプロがたくさんいることも強みです。そしてどの部門の担当者も自分が担当した作品が大好きになってしまい、少しでも長く愛される作品にしたいと思いますし、一度シリーズが途絶えても、周年企画を立ち上げよう!となりまして。さまざまな部門の担当が立ち上がった結果、長期的に愛される作品がたくさん生まれているのではないかと思います。会社としてのオフィシャルなスタンスは別にあるかもしれませんが、現場にいる身としてはそう感じています。

――日本のアニメをめぐる環境は、どんどん変化してきています。とりわけグローバルに人気が拡大していることは、御社の事業にも変化をもたらしていると思うのですが、グローバル展開について考えていることがあればお伺いしたいです。

神木:私は現場寄りの話しかできませんが、作品を作った先に海外のファンの方々がいらっしゃるという実感は確かにあります。たとえば『デジモン』は、グローバルに人気のある作品で、特に北米エリアや中国、韓国、ドイツや中南米などにファンの方がたくさんいらっしゃいます。毎年「DIGIMON CON(デジモンコン)」という配信イベントを行っているのですが、今年も様々な国の方々が参加してくださり、多様な言語が飛び交っていました。デジモンも然り、海外のファンにアニメを届けるためにはさまざまな部門の協力が必要です。例えば、私が映画プロジェクトに参加していた際、海外での上映を行うために映像の修正をする必要が出てきたんです。少しでも早く上映を実現するために、海外の現地法人、東京にいる海外担当、企画、製作みんなが集まってすぐに打合せを行い、次の日にはリテイクを開始することができました。そんなところが東映アニメーションの強みであり好きなところです。

『デジモンアドベンチャー』©本郷あきよし・東映アニメーション

――社会の変化という点で、国内の少子化もあります。少子化を踏まえた戦略のようなものはあるのでしょうか。

神木:これからも子どもに向き合い続けて作品作りを続けたいですし、同時に大人が観ても面白いものにしたいという気持ちは変わりません。一方、子どもの数が減っているのも現実です。そのため親子で楽しんでいただくとか、小さい時に観ていた方にも届ける、あるいは海外にもアピールしていくなど、新しい試みを実行していく必要がありますし、今の社会状況ではそれが宿命ですね……! 例えば、『デジモン』シリーズだと、当時観てくれていた方は、今20代後半から30代になっていると思います。当時『デジモン』を観ていた子どもたちが、様々なライフステージに立っても作品を思い出してくれ、子どもを持った時に『デジモン』を伝えたいと思ってくださった時、私たちはどんなサポートができるかと考えるようにしています。

『デジモン』シリーズは挑戦を尊重してくれる

『デジモンアドベンチャー02』©本郷あきよし・東映アニメーション

――『デジモン』シリーズとしては、『DIGIMON BEATBREAK(デジモンビートブレイク)』が10月から放送を予定しているそうですね。どんな作品になるのでしょうか?

神木:3月にティザービジュアル・映像を公開しましたが、BEATBREAK担当たちが新作のイメージを詰め込んだものになります。

『DIGIMON BEATBREAK』ティザービジュアル©本郷あきよし・東映アニメーション

――従来の『デジモン』シリーズと比べて、ダークな雰囲気ですね。従来とは異なるタイプの『デジモン』になるのでしょうか。

神木:そうですね。『デジモン』シリーズは挑戦することを尊重してくれる現場なので、時勢にあうものを貪欲に作っていきたいと思っています。また、会社には『デジモン』を観て育った『デジモン』好きがたくさんいて、このシリーズがどうして愛されているかの本質を捉えている人が集まっています。そして、当時アニメ製作に関わっていた担当者とも話すことができる環境ですので、『デジモン』シリーズの遺伝子も大切に受け継いでいきたいと思っています。

 

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