『あんぱん』も描く“朝ドラあるある”の男尊女卑問題 正義と悪が介在できない親子の縁も

『あんぱん』朝ドラあるあるの男尊女卑問題

 今田美桜、北村匠海がいよいよ登板で物語が動き出す、NHK連続テレビ小説『あんぱん』第3週「なんのために生まれて」(演出:柳川強)。今田美桜の本格登場週で、今田美桜が生き生きと疾走する姿が描かれる。それと、嵩のナイーブな心情を北村匠海が表情豊かに演じた。

 昭和10年(1935年)、ラジオで国際放送がはじまった年、のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)は今後の進路について考えるようになる。

 そこに立ちはだかるのは、朝ドラあるある、男尊女卑の社会問題だ。のぶの幼なじみ・貴島(市川知宏)が海軍中尉になって御免与町に帰郷してきた。彼のツテで、祭りで行うパン食い競走に朝田パンのパンを納品することになった。その競走の優勝賞品がラジオと聞いて、のぶは出場したいと貴島に申し出る。だが、釜次(吉田鋼太郎)が頭ごなしに反対する。釜次だけの偏見ではなく、この時代、社会には女性はこういう催しには参加しないものという暗黙のルールが存在していた。

 「おなごはつまらん」と思うのぶ。祭りの当日、子どもの部で小夏という少女が競走に参加したいと申し込んだところ、退けられ、のぶは子どもの部ならいいではないかと提案するが、却下される。

 のぶには期待していない釜次だがラジオはほしい。弟子の豪(細田佳央太)を競走に参加するようけしかけた。ラジオがあれば日本にいながらにして海外の様子を知ることができると、楽しみにする釜次。彼がラジオで外国の様子を聞けば、結太郎(加瀬亮)のように、海外では女性がもっと自立して活躍していることを理解できるかもしれない。

 のぶを放っておけない嵩は、おなかが痛いからと代わりにのぶに出てもらうことにする。のぶは「ハチキンおのぶ」の異名どおり、男性たちをごぼう抜きにして1等になった。が、結局、女性は出場できないという違反を行ったので無効になってしまう。

 でも、繰り上がりで優勝した千尋(中沢元紀)が家にはすでにラジオがあるからとのぶにラジオを譲る。しかも千尋は競技中、転びそうになったのぶをさりげなく助けていた。

 海辺でのぶが千尋に助けてもらったお礼を言う姿を穏やかでない気持ちで見つめる嵩。彼もまた千尋の助言で新聞の漫画賞に応募してみごと受賞して新聞に掲載されていた。幼少時はあんなにも儚げだった千尋がいまや、嵩やのぶの役に立つ、たのもしき存在になっていた。精神的なことのみならず身体的にもたくましく育っていて、嵩は立場がない。相撲を挑んだら軽く投げられてしまう。賞金の一部をお小遣いと渡すことが精一杯の主張である。でも、嵩のこのお礼に賞金の何割かを弟にちゃんと渡すという行為は立派である。

 のぶは、もらったラジオで近隣の子どもたちとラジオ体操をしながら、教師になりたいと考えるようになる。だがまた釜次が猛反対。女性は家事をやるものという考えがこびりついている明治生まれ。学校を出たら羽多子(江口のりこ)の手伝いをすべきだと主張する。だから次女の蘭子(河合優実)はすでに郵便局で働いていた。だが、羽多子も蘭子もメイコ(原菜乃華)ものぶを師範学校に行かせてやってくれと頼む。このとき、結太郎の形見の帽子が、蘭子からメイコ、そして釜次に渡っていくアイデアは結太郎の魂がここにまだ息づいているようでぐっと来た(帽子をやけにカッコよくかぶる吉田鋼太郎が渋い)。

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