松嶋菜々子が『あんぱん』登美子を演じるのは運命だった? 戸田菜穂や北村匠海との関係を辿る

朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)に、登美子(松嶋菜々子)が帰ってきた。第2週ラスト、のぶ(永瀬ゆずな)と嵩(木村優来)がまだ幼少期の頃に、嵩が登美子と決別してから8年。そのちょうど1週間後、第3週のラストに再び御免与町に帰ってきた登美子は、自由奔放な振る舞いで柳井家を掻き乱していく。
苛立ちを隠しきれないのは千代子(戸田菜穂)だ。再婚相手の家で身につけてきたお茶を点て始める登美子。心が静まるどころか、苦い顔の千代子に、登美子は「お作法どおりじゃなくても、結構ですよ」と高圧的な態度で仕掛けていく。千代子も黙ってばかりではない。「いつまで、いらっしゃるがですか?」とここは登美子のいる場所ではないと示す千代子に対して、登美子は「お茶、お花、お琴、一とおりのことは身につけました。それでも、女が1人で生きていくのは大変なんですよ。それに、私は嵩のことが心配なんです」と返す。それではなぜ、8年間も便りをよこさなかったのか――どの面を下げて、というのは多くの視聴者が疑問に思う部分であり、呆れ果てたような千代子の表情が視聴者の思いを代弁してくれている。

怒りが滲んだ語気で、「再婚先で親心も学んでこられたようですね」という一言に、登美子も千代子の方を睨みながら、2人は微笑みあい、やがて目を逸らす。バチバチのやり合いに挟まれ動けない、女中のしん(瞳水ひまり)。松嶋菜々子と戸田菜穂は共に51歳で、松島は『ひまわり』(1996年度前期)、戸田は『ええにょぼ』(1993年度前期)で朝ドラヒロインを経験しているという似た背景も相まって、芝居のやり合いとしても気迫のこもったシーンに感じられた。
もうひとり、登美子に攻撃的な態度を見せるのが、のぶ(今田美桜)。8年前、高知の街まで登美子を訪ねた嵩(北村匠海)を傷つけたことが許せなかったのだ。登美子を激しく責め立てるのぶだったが、嵩にとっては捨てられたとしても、ずっと会いたかった母親。「のぶちゃんに何が分かるんだよ」と、8年前とは逆にのぶの優しさを振り払ってしまう。登美子に対して、そっけない態度を見せる千尋(中沢元紀)と同じく、最初のうちは嵩も戸惑いを隠せずにいた。距離を縮めたのは、入選した漫画を登美子が素直に誉めてくれたこと。登美子が両手で嵩の頭をくしゃくしゃに撫でる様子は、親子であることを実感させる。北村匠海と松嶋は、ドラマ『王様に捧ぐ薬指』(2023年/TBS系)でも親子の間柄にあり、息子を捨てた過去を持つ母という、『あんぱん』と似た境遇の役柄を演じている。