『月夜行路』“ルナ”波瑠が父と向き合う最終章へ 夏目漱石が導いた遺言書の行方

日本テレビ水曜ドラマ『月夜行路 -答えは名作の中に-』第9話で、物語はいよいよ最終章へ。これまで避けてきた父・英介(石橋凌)との関係に、ルナ(波瑠)が向き合う時が近づいてきた。

母・美里(石野真子)から依頼されたパソコンのパスコード解読は、夏目漱石ゆかりの地や古書店、専門家を巡っても決定打が見つからないまま。英介が手術を受けると聞かされても、ルナは「パソコンに隠された父の真意を知るまでは会いに行けない」と言う。父に会いたい気持ちがないわけではない。だが、長い確執を抱えてきたルナにとって、何も理解しないまま病室へ向かうことは簡単ではないのだろう。

いつものようにマーキームーンで談笑していると、ルナの店の常連で、漱石好きが高じて新宿の「夏目坂」に自宅を構えるほどだった富士子(円城寺あや)が、急逝したという知らせが届く。弔問に訪れたルナと涼子(麻生久美子)は、次女の菜名子(北乃きい)から、兄姉との間で遺産相続をめぐる揉め事が起きていると聞かされる。介護に関わってこなかった兄姉が遺産の三分割を主張し、さらに富士子が生前に籍を入れていた再婚相手・啓介(板尾創路)まで現れる。菜名子によれば、啓介は財産目当てだと思われないよう、結婚時に相続を放棄する書類を書いていたという。だがその啓介が、富士子の大切にしていた遺品や家を売ると言い出したことで、家族の間にはますます不穏な空気が流れ始める。

ルナが引っかかったのは、啓介の言動だった。啓介は富士子と漱石の話を通じて距離を縮めたと言う。だがその一方で、富士子が大切にしていた漱石の本を処分しようとしていた。菜名子は、啓介が漱石好きを装って、遺産目当てで富士子に近づいたのではないかと疑い始める。しかも金庫には、「遺産はすべて夫である自分が相続する」と書かれた遺書があるという。ところが、実際に金庫を開けてみると、中は空だった。

啓介は不本意ながらも法定相続で我慢すると言い、いったん話は落ち着いたかに見えた。だが、ルナはまだ違和感を拭えない。きっかけは、啓介が犬を「ヘクトー」と呼んだことだった。ヘクトーは、『硝子戸の中』に登場する犬の名前である。同作には、漱石の家に泥棒が入ったあと、柱の中に金を隠すようになったという話が出てくる。漱石を深く愛していた富士子なら、大切なものを同じように隠したのではないか。そう考えたルナは、家の柱を調べ、そこから本物の遺言書を見つけ出す。そこには「高坂富士子の財産は全て三人の子供に等しく相続させる」と記されていた。

これで解決かと思われたが、涼子の一言で、啓介への疑いは別の見え方に変わっていく。富士子の家には『硝子戸の中』をはじめ、『坊っちゃん』『こころ』『道草』『虞美人草』だけが2冊ずつあった。そして庭には、ポピーの花が咲いていた。ポピーの別名は「虞美人草」。そのつながりから、2冊ずつあった本のうち1冊は啓介のものだったとわかる。啓介は財産目当てで漱石好きを演じていたのではない。富士子と同じように漱石を愛し、そのことで彼女と惹かれ合っていたのだ。
裏庭に咲いている1本の百合とたくさんのポピー。『夢十夜』には「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」という一節がある。その100年後、女性が百合になって戻ってくる。富士子が大好きだった小説の世界を、啓介は彼女の庭に残していたのだ。財産を奪おうとする悪者に見えた啓介の本心は、富士子の居場所と、彼女が心配していた菜名子を守ることにあった。人は弱い。大切な人を失った後、目の前に大きな財産があれば、どれだけ正しくありたいと思っても心が揺らぐことはある。啓介は、富士子を愛していたからこそ、彼女の財産をめぐって家族が壊れていくことを避けたかったのだろう。自分が相続を受け取らないと決めたのは、富士子の遺した場所と、菜名子たちの関係を守るためだった。

そしてラストでは、英介の容体が急変したという知らせが入る。それでも行こうとしないルナに、涼子は「ママがどうしたいかじゃないの?」という言葉を投げかける。これまで涼子は、何度もルナに本音を引き出され、前へ進むきっかけをもらってきた。だからこそ今度は、涼子がルナの止まった時間を動かす番だ。
富士子と啓介の一件は、残されたものの中に、本当の思いが隠されていることを示していた。それは、英介がパソコンに残した謎にもつながる。父はルナに何を伝えようとしているのか。最終回に向けて、ルナがその思いとどう向き合うのかが大きな焦点になってきた。
■放送情報
水曜ドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中に―』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:波瑠、麻生久美子、作間龍斗、久本雅美、栁俊太郎、渋川清彦ほか
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社文庫)、『月夜行路 Returns』(講談社)
脚本:清水友佳子
音楽:Face2fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
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