『風、薫る』去りゆく友の寂しさを背負って “りん”見上愛と“直美”上坂樹里が選ぶ道

ゆき(中井友望)がりん(見上愛)と直美(上坂樹里)のもとを去ってしまった寂しさが残るNHK連続テレビ小説『風、薫る』第48話では、長く入院していた丸山(若林時英)が晴れて退院を迎え、病院を去っていく。“去る”ことにもこうして種類があるのだ。

退院の日、りんと直美がよく話している庭には丸山とりんの姿が。なんと丸山はりんに淡い恋心を抱いており、告白をしたのである。毎日顔を合わせて優しく声をかけられていれば、恋に落ちることもあるだろう。りんが「今は子育てもあって……」と断ると、りんに子どもがいたことを初めて知った丸山は目を白黒させる。患者に寄り添うように接するのは、ナースの“仕事”。ナースの生活のことを全く知らなかった丸山の姿は、りんが個人の生活と仕事をしっかり切り離しているという何よりの証拠でもある。
さらに、退院は嬉しいことのはずなのに丸山はある問題を抱えていた。住む場所がないというのだ。制約はたくさんあるが、朝起きてから夜寝るまで世話をされ、食事も出る病院は患者にとっては生活の場そのもの。怪我や病気が治癒すればそれが奪われてしまうというのは、あべこべな状態だが大問題である。そこで手を差し伸べたのは直美。牧師の吉江(原田泰造)を頼って、元いた長屋に丸山を住まわせることにしたのである。

生活とは、あらゆる意味でその人のベースとなるものだ。ベースがあるから自分の変化を知ることができる。吉江から「息をするのが楽そうに見えます、以前より」と言われた直美は、「寮はいつもにぎやかなんで、さみしくなくなっただけかも」と笑った。ずっと直美の変化を見守ってきた吉江は、その成長にいち早く気がついたようで、目を見張っていた。直美はいつの間にか「さみしい」という気持ちを自覚し、口にすることができるようになっていたのだ。たとえばりんと出会った頃の直美は、子どもには優しかったが、基本的に他人のことが嫌いで自分の中にある孤独感に押し潰されそうだった。でも志を同じくする仲間ができたことや仕事を通して関わる人たちが増えたことで、直美は相手のことを考えて行動できるようになった。
りんも実家へと帰ったことで、環(英茉)が手際良くおままごと遊びをしているのを通して成長を知り、妹の安(早坂美海)が瑞穂屋に来ている槇村(林裕太)の兄に好意を寄せていることを知る。りん自身は、看護に携わっている自分の人生に幸せを感じ始める一方、安は、気になる人ができたことで姉とはまた違った“自分の幸せ”を考え始めていた。これもまた、個人の仕事と生活がふと交わるからこそ、見えてくる変化である。同じ日々はひとつとしてなく、日々違う顔を見せる家族や仲間からもらえるパワーがあるからこそ、人は頑張れるのかもしれない。

ゆきがナースを辞めたこともあり、それぞれに自分にとっての“仕事”について振り返る2人。吉江に「直美さん、看護婦向いてそうですね」と言われた直美は、「そう言ってくれる子もいるんですけど自分ではさっぱり……」と自信がなさげ。りんも迷うことばかりだ。向いているかはわからないけれど、それでも進んでいきたいと思える仕事がある。休暇を通して、2人がそんな思いを強くしたように思えた。
少し前までは奥様になることが人生の“あがり”だった時代があったし、りんが生きる時代はまだその風潮が強いのだろう。仕事で身を立てようとする女性にとってはまだまだ苦難の道が続くだろうが、これもまた幸せのひとつということを教えられた気がした。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















