『となりのナースエイド』から『ダメマネ!』へ 川栄李奈、コメディエンヌとしての現在地

2024年の主演作『となりのナースエイド』(日本テレビ系)で圧倒的な存在感を放った川栄李奈が、今度は毒舌マネージャーとして帰ってくる。4月20日より日本テレビ系で放送がスタートする日曜ドラマ『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』(以下、『ダメマネ!』)は、芸能界の裏側を舞台にした痛快コメディ。元天才子役でありながら芸能事務所の新人マネージャーとして奮闘する神田川美和役を川栄が演じる。
異例の速さで演技派のポジションを確立してきた川栄だが、今作で演じる美和は、明らかに攻めのキャスティングだ。彼女がこれまで培ってきた自然体の演技に、コメディエンヌとしての切れ味がどこまで加わるのか。
『となりのナースエイド』で川栄が演じたのは、看護助手という立場で病院内のトラブルに立ち向かう主人公・桜庭澪。明るく前向きな性格の裏に、医師だった過去とトラウマを抱える複雑な役どころであり、彼女にとってはキャリアの中でもとりわけ振り幅の大きい挑戦だった。
川栄李奈&高杉真宙、1年ぶりの再会を語る 『となりのナースエイド』は「成長できる現場」
2024年1月期に放送された日本テレビ系水曜ドラマ『となりのナースエイド』。医療現場の縁の下の力持ち「ナースエイド」の奮闘を描…注目すべきは、その二面性を演じ分ける表現力だ。患者を前にしたときの優しさと、元医師としての冷静な判断力。そのギャップを川栄は、決して演技を盛らずに、あくまで自然な流れの中で見せていた。感情を爆発させるような場面よりも、むしろ一瞬の表情や間にこそ、彼女の強みが際立った。また、ドラマ全体に漂う軽やかなコメディ要素においても、川栄の“間”の感覚は抜群だった。高杉真宙との絶妙なやり取りは、視聴者から「名コンビ」と呼ばれ、セリフのテンポや表情の遊びにこそ、バラエティ出身ならではの勘の良さが生きていた印象だ。

『ダメマネ!』で川栄が演じる神田川美和は、“元天才子役”という設定を隠しながらも、歯に衣着せぬ毒舌でクセの強いタレントたちをマネジメントしていく。つまり、これまでの「支える側」から「仕掛けていく側」へのシフトであり、彼女の演技キャリアにおいても転換点となる役だ。キャラクターとしての美和は、決して“万人に愛されるヒロイン”ではない。むしろ、初登場時は視聴者の反発を呼ぶ可能性すらある。しかし川栄は、どんなに強い言葉を吐いても、どこかに憎めなさを残す俳優だ。その素地が、今回のような毒舌キャラクターにも奥行きを与えるだろう。
バラエティ的な強度のある演出が想定される本作において、瑠東東一郎監督と川栄の相性も鍵となる。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)シリーズや『極主夫道』(読売テレビ・日本テレビ系)で知られる瑠東監督は、俳優のアドリブや即興性を積極的に引き出すことで知られ、川栄のような“反射神経型”の演者にはうってつけだ。

そして、川栄にとって今回の最大のチャレンジとなるのが、安田顕との初共演だろう。演技において空気をねじ曲げるような圧倒的な存在感を持つ安田は、抑制された芝居から突如振り切る爆発力までを持ち合わせた異物のような俳優だ。演じる犀川部長は、合理的で冷静、しかしサディスティックという多面的なキャラクター。川栄の演じる毒舌キャラと真正面からぶつかる設定は、単なるコメディでは終わらない予感を抱かせる。対立から協力、あるいは過去の因縁へ。二人の演技がどう交錯していくか、それ自体が本作の見どころになるだろう。
初日の撮影では、川栄が安田に「想像の倍は面白かった」と語り、安田も川栄の声の通りの良さや人柄に触れている(※)。おそらく、既に現場には異なる演技スタイルが拮抗する手応えがあるのだろう。























