宇野維正の映画興行分析
『アマチュア』、週末興収は『ドラえもん』に肉薄 洋画がヒットするための二つの条件

4月第2週の動員ランキングは、『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』が6週連続1位に。週末3日間の動員は14万2000人、興収は1億8100万円。公開から38日間の累計動員は340万3300人、累計興収は40億7700万円。昨年の『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』は、同時期に公開された『変な家』のサプライズヒットもあって、動員ランキングでトップに立ったのは公開初週の1週のみだったが、今年は今週末に公開を控えた『名探偵コナン』新作公開までの1ヶ月半、ずっと1位の座を守り続けたことになる。
2位に初登場したのはラミ・マレック主演、ジェームズ・ホーズ監督のスパイアクション・サスペンス『アマチュア』。オープニング3日間の動員は11万1000人、興収は1億6400万円と、興収では1位の『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』に肉薄してみせた。ちなみに日本と同じ週に公開された北米での『アマチュア』は初登場3位。週末興収は1500万ドル(約21億円)と、さすがにマーケット規模の違いが表れているが、「実写の洋画で北米よりも日本の方が初登場の順位が高い」という珍しい現象となった。
『アマチュア』が健闘した理由としては、2018年の『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットによって、近年のハリウッドスターとしては珍しく日本でラミ・マレックの知名度が高いことが挙げられるだろう。『ボヘミアン・ラプソディ』が公開されてからもう6年以上が経つが、助演作品では『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』や『オッペンハイマー』のような作品はあったものの、気楽に鑑賞できるエンターテインメント大作での主演作は今回の『アマチュア』が初めて。そこに、来日プロモーションの効果も相まって、作品の存在を多くの人に知らしめることに成功した。
この洋画のヒットの条件と言える、「多くの人に知られている主演スター」「作品の存在を多くの人に知らしめる」(来日してのプロモーションはマストではないが、やはり効果は大きい)の二つが、なかなか近年の洋画では揃わない。例えば、先週末初登場10位とギリギリでトップ10に入ったレネー・ゼルウィガー主演『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』のオープニング3日間の動員は2万500人、興収は3000万円。2016年公開の前作『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』が興収4億6900万円、2004年公開の前々作『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』が興収13億円、2001年公開の第1作『ブリジット・ジョーンズの日記』が興収21億4000万円。こうして数字を並べてみると、この20年あまりの間に起こった洋画の衰退だけでなく、そもそも新作の存在をどれだけ宣伝できていたかに疑問を覚えずにはいられない。
もっとも、フランスのスタジオカナル主導でフランス、イギリス、アメリカの合作として製作された今回の『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』は、なんと北米では劇場公開が見送られて配信プラットフォームでの公開となった。時代はすっかり「映画を劇場で公開してくれるだけありがたい」という局面に入っている。
■公開情報
『アマチュア』
全国公開中
出演:ラミ・マレック、ローレンス・フィッシュバーン、レイチェル・ブロズナハンほか
監督:ジェームズ・ホーズ
製作:ラミ・マレック
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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