赤楚衛二は“目”に豊かな感情を映し出す 『相続探偵』灰江役で体現した多面的な魅力を総括

赤楚衛二が主演を務めるドラマ『相続探偵』(日本テレビ系)が3月29日に最終回を迎える。本作は、元弁護士でワケありの経歴を持つ相続専門の探偵・灰江七生(赤楚衛二)が、休学中の医大生・令子(桜田ひより)、元科捜研のスーパーエース・朝永(矢本悠馬)とともに相続にまつわる難事件を解決していくミステリー。ドラマがスタートしてからの約3カ月間、赤楚が体現する灰江というキャラクターの多面的な魅力に心惹かれてやまなかった。
原作は、『ケイゾク』(TBS系)や『SPEC』(TBS系)で知られる脚本家の西荻弓絵がストーリー、幾田羊が作画を手がける同名漫画だ。西荻が描く主人公は並外れた頭脳を持っているが、身なりに無頓着だったり、傍若無人な振る舞いで周囲を振り回したりとエキセントリックなキャラクターが多く、灰江も一部ではその系譜を引き継いでいる。

遺産相続に関する膨大な知識と優れた観察眼で鮮やかに事件を解決していく灰江。相続探偵としての腕は確かなのだが、なにぶん癖が強い。いつも飄々としていて掴みどころがなく、ターゲットとなる人間に丁寧な態度で近づいたかと思えば、シニカルな言葉で挑発することも。そんな灰江の独特なキャラクターを、赤楚は猫背気味な立ち姿やちょっと変わった動きなど、しっかりと見た目から作り込んでいる。
一方で、灰江は表社会から裏社会まで幅広い人脈を持ち、なんだかんだで周りから愛されている男だ。そこには赤楚自身の魅力であるチャーミングさが最大限生かされており、ファンにとっては新鮮さと馴染み深さが共存する役柄と言えるのではないだろうか。

また、ともすれば無機質で人間味のないキャラクターに見えそうな灰江の喜怒哀楽を伝えるのが、赤楚の得意とする“目”の演技だ。例えば、裏組織に騙され、後妻業に手を染めた紗流(宮内ひとみ)のトリックを暴いた第2話。警察に連行されていく紗流の背中を見送る時の憂いを帯びた瞳には、罪を重ねざるを得なかった彼女の境遇に対する憐れみや、捕まれば死刑になることが分かった上で罪を暴いた灰江の苦しみが滲んでいた。
第8話で亡き東大名誉教授・薮内(佐野史郎)に浮上した7人の隠し子疑惑の真相しかり、相続トラブルや事件は解決したとしても、スッキリするとは限らず、苦味が残ることも多い。それでも灰江は、故人の意志を最大限尊重し、その思いを捻じ曲げることなく遺族に伝えようとする。それは彼自身が大切な人の死を汚された経験があるからだ。






















