矢本悠馬は“変人らしさ”を自在に操る 『相続探偵』で発揮されるキャラ作りの妙

“個性派”と言ってしまえばそれまでなのだが、その一言では片付けられない名優がいる。それは矢本悠馬だ。コミカルな役柄からシリアスな役まで幅広くこなし、どの作品でも確かな存在感を放つ彼の演技には、ただのクセが強い俳優とは一線を画す奥深さがある。現在放送中の『相続探偵』(日本テレビ系)がまさにその演技の真価が発揮されている作品となっている。
本作は、主人公の探偵・灰江七生(赤楚衛二)が、三富令子(桜田ひより)、朝永秀樹(矢本悠馬)という個性豊かな仲間たちとともに、難解な相続問題をコミカルに、痛快に、時に大真面目に解決していく相続ミステリー。赤楚演じる灰江の掴みどころがない性格や緩急のある演技はもちろんだが、彼を取り巻く仲間たちもかなり強烈な個性の持ち主。特に矢本が演じる朝永は飄々としており、一見すると何を考えているのかわからない。ゲームが大好きで探偵事務所ではいつもゲームで遊んでいるが、いざ依頼が来ると颯爽と事件解決のために尽力する。
マッシュルームヘアが特徴的な朝永は元警視庁科捜研のエース研究員。とにかく声が小さく、何か自分の意見を言うときにはだいたい耳をすまさなければ聞こえないほどの小声で話すことが多いが、得意なこととなると早口になる。

矢本は公式サイトにおいて、「他の作品では見当たらない新鮮なキャラクターなので演じていて楽しいですし、役者として試されているというか修行になりますね。特に、小声で早口という設定なので、どうしてもニュアンスが消えてしまいガチなのでそこは気をつけています。原作のもっている精神性は受け継ぎつつ、自分なりの解釈でドラマ版の朝永を作り上げたいと思っています。そして、灰江とは異なるベクトルで“変人らしさ”みたいなものを表現できたらいいなとも思っています」と話していた(※)。

原作でもかなりの変人である朝永を実写で表現する、それだけでもかなりの難しさを伴うが、矢本が演じる朝永は原作から飛び出してきたかのようなリアリティを伴っていた。かといって、原作の朝永をそのまま演じているのではなく、矢本らしいユーモアもふんだんに取り入れられているのだ。





















